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小さな花の物語  作者: 燈華


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悲しい思い出の花

リコリスの花が咲いていた。

反射的に視線を逸らした。


リコリスの花なんて嫌いだ。

それは悲しい思い出に直結する。


あの日もリコリスの花が咲いていた。

いつものように「行ってくるよ」と言って出掛けていった彼。

笑顔で出掛けていったのに。

その笑顔を二度と見ることはできなかった。


彼は出先で横断歩道を渡っている時に信号無視の車にはねられたのだ。

事故の知らせを受けて病院に駆けつけた時にはもう、彼は息を引き取っていた。


後から事故の時に彼はリコリスの花束を持っていたと聞いた。

出かける時は持っていなかったのに。


何故と疑問に思っていたけど、一年経ってまたリコリスの花が咲く頃になって庭に咲いていたリコリスの花を彼にあげたという方から手紙が届いた。




『あの方は妻が好きな花なんですよ、と言っていたのでよかったらと切って差し上げました。

妻が喜ぶと優しく微笑んでいた姿が思い出されます。

奥様のことを本当に大切にされているのが伝わってきました。

遅くなりましたが、お伝えしたほうがいいかと思いましてお手紙差し上げました。』




ぽたりと涙がこぼれる。

あの花は私に贈ってくれるつもりだったのだ。

私が好きな花だったから。


その花が彼の最期に寄り添っていてくれたのなら、少しは……


それでも毎年リコリスの花を見れば悲しみが押し寄せるだろう。

今の私のように。


でもいつかは悲しいだけの気持ちではなくリコリスの花を眺める日がくるだろう。

そう思えた。


読んでいただき、ありがとうございました。

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