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小さな花の物語  作者: 燈華


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敏感の花

用事を果たすために彼と歩いて向かっていると幟が立っている店の隣を通った。

つい幟に目が行く。


〈葡萄フェア開催中〉


あ、美味しそう。


「帰りに寄ろうか」


はっとして彼に視線を戻す。


「ごめん、つい」


彼は優しく微笑(わら)う。


「ううん、気にしなくていいよ」


彼は本当に優しい。

彼との話の最中に気を逸らしたのに許してくれる。


あまり気にしていたら却って彼は気に病むだろう。

私は苦笑して告げる。


「敏感に反応しちゃうんだよね」

「それだけ好きってことだろうね」

「うん」


私は葡萄が好きだ。

甘いものも酸っぱいものもどちらも好きだ。


「じゃあ帰りはあのお店で葡萄のスイーツを食べよう」

「いいの?」

「もちろん」

「ありがとう」


お店を忘れないように佇まいと店名を確認しておく。


窓辺におじぎ草の鉢が置いてあるのが見えた。

できたらあの席がいいな。


そう思いながら彼に視線を戻した。

彼は優しい眼差しを私に向けながら言った。


「帰りの楽しみができたね」

「うん!」

「さっさと用事を済ませちゃおう」

「うん」


少々気の重い用事だったが、この後でご褒美が待っていると思えば頑張れる。


「僕も楽しみだよ」

「本当?」

「もちろん。こんなことで嘘は言わないよ」

「よかった」


彼も楽しみにしてくれるならよかった。

先程まで二人でやや重い足取りだったものが急ぎ足になっていた。


それに気づいて二人で苦笑したけど、歩調を緩めることはなかった。

さっさと用事を終わらせて美味しい葡萄のスイーツを堪能しよう。



読んでいただき、ありがとうございました。

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