危険な快楽の花
それを口に入れる。
「んーーー!」
声にならない声を上げる。
口の中で濃厚に溶けていく。
甘味と苦味のバランスが滅茶苦茶いい。
今まで食べたことのないレベルの美味しさだった。
それは、危険な快楽だった。
「これ知ったら戻れなくなっちゃう」
「もう手遅れだろう」
「そうだね。もう知っちゃったもんね」
どうしよう……?
これはもうその快楽を教えた彼に責任を取って用意してもらうしかない。
私は彼にねだるような視線を向けた。
「責任は取ってね」
「わかった。一生な」
「え?」
目を丸くする。
それって、つまり……
「このチョコ食べ放題?」
「さすがに食べ放題とまでは言えないが、これから作る新作は全て食べさせてやるよ」
「本当?」
自分の目がキラキラしているのがわかる。
「ああ」
頼まれて彼のお姉さんの誕生日プレゼントとしてチュベローズの香水を用意したお礼として、ショコラティエの彼の作ったチョコレートをもらっただけなのに。
そこまでしてもらっていいのだろうか?
ああ、でも誘惑には勝てない。
「よろしくお願いします!」
そう告げた途端、彼がそれはそれは嬉しそうに微笑った。
あれ?
何か思っていたことと違うかもしれない?
「期待していろよ」
楽しそうに告げる彼に意味を問う勇気はなかった。
「うん、楽しみにしてる!」
とりあえずチョコレートは楽しみだ。
読んでいただき、ありがとうございました。




