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小さな花の物語  作者: 燈華


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誠実の花4

桔梗の花を飾りながら言う。


「誠実って何だろうね」

「うん? どうしたの、急に」

「ほら、死んだ後に愛人がいたと発覚したりするじゃない。生きている間は隠し通したから誠実だ、って見る向きもあるでしょ。浮気をするならバレずにやれ、っていう感じで」

「いや誠実じゃないでしょ、それ」

「だよね」

「浮気をする時点で誠実じゃないし」

「そうだよね!」


やっぱそうかと頷く。


「言っておくけど、僕はそんなことしてないから」

「うん、信じてる」


彼がほっとしたように息を吐いた。


「だけどもし死後に発覚したら君の骨壺は愛人のところに送ってあげるから」


何故か彼は嬉しそうに微笑(わら)う。

何故? まさか本当は浮気してる? そしてその愛人のほうが好きなの?

じろりと疑いの眼差しを向けると彼は慌てたように言う。


「つまり結婚してくれるってことでしょう?」

「あー、そうだね。ずっと一緒にいられると思っていたから」

「もちろんそのつもりだよ。でも今度きちんとプロポーズするね」

「うん」

「でも何で急にそんなことを言い出したの?」

「そんな話を聞いたから」

「誰に?」

「ご近所さん」


先程買い物に行ったら井戸端会議をしていたので()ぜてもらったのだ。


「あー、それは聞かないほうがいい気がする」


そうかもしれない。

これからのご近所付き合いに支障をきたす恐れがある。

だから私は頷いて話さないことに決めた。


「ところで、」


彼がちらりと仏壇に飾られた祖父の写真を見る。


「仏壇の前でそんな話していたらおじいさんに泣かれない?」

「あー、泣かれるかも。おばあちゃんと仲が良かったし」


私は慌てて仏壇に向き直る。

手を合わせて心の中で「ごめんなさい」と告げた。



読んでいただき、ありがとうございました。

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