厳格の花
リビングから庭を見ながらお茶を飲み、彼が何気なく言った。
「君の傍は居心地がいい」
緩んだ表情を見ていると本当にくつろいでいるのがわかる。
同居する彼の祖父は厳格で彼も随分と厳しく育てられたと聞いている。
それで随分つらい思いをしたとも。
だから人と接する時は緊張してしまうと言っていた。
そんな彼が私といる時にリラックスしてくれているなら嬉しい。
私も彼の傍なら自然体でいられる。
両親も礼儀正しい彼を気に入っている。
今日両親は不在だが、彼が遊びに来ると言っても彼なら問題ないとあっさりと許可を出していたくらいだ。
「そう言ってくれて嬉しいかな。私も貴方の傍だと自分らしくいられる」
彼が嬉しそうに微笑む。
こんなふうに柔らかく微笑むようになったのは出会ってから三ヶ月程経った頃だっただろうか。
それが嬉しかったことを覚えている。
「庭に出てもいい?」
「いいよ」
彼が窓を開けて庭へと下りていく。
私もついていく。
ゆったりとした歩調で庭を歩く。
といってもそれほど広い庭ではない。
会話はない。
それでもこの穏やかな時間が心地いい。
ふと彼が足を止める。
一メートルほどの木にいくつもの花が丸くついて咲いている。ランタナだ。
彼はランタナの花を見下ろす。
「ランタナの木も嫌いだったけど、君が大事にしているならそれだけでただ綺麗な花だと思える」
このランタナの木は両親が私の高校入学した時に植えてくれたものだ。
第一志望の高校に合格して喜んでいたからと言って。
だから私も両親も大事にしていた。
大事にしている姿を彼は見ていた。
「無理してない?」
「してないよ。しなくていいことが嬉しい」
「貴方が無理しないでその花を好きだって言ってくれるのが嬉しい」
「うん」
二人でしばらくランタナの花を見ていた。
穏やかで優しい午後の一幕だ。
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