風格と歳月の花
一般公開されている旧家の屋敷。
そこを彼と一緒に訪れた。
もう誰も住んではおらず、財団が管理している屋敷だ。
その一室に写真が飾られている。
この建物とその前に立っている壮年の男性の写真だ。
建物の傍らには大きなパンパスグラスも風に靡いている。
建物も口を真一文字に結んでいる男性も風格を感じる。
長い歳月を経たものだけが醸し出せる風格だ。
その写真を見て彼は力なく言う。
「僕なんてまだまだだな」
確かに彼はひょろひょろしていて風格はゼロだ。
「風格っていうのは歳を重ねないと出ないものだよ。つまり、まだまだ若すぎるってこと」
「そっか。いつか僕もあんなふうな風格を持てるかな?」
「んー。生き方次第?」
「そこは持てるって言ってくれないんだ」
「だってわからないし」
「それはそうだけど」
彼は不満そうだ。
「無責任なことなんて言えないよ」
「そこは気休めでも持てるよと言ってほしかった」
「うーん、じゃあ、頑張って?」
「軽い!」
「だって私は君が風格を持っても持たなくてもどちらでもいいもの。それくらいじゃ気持ちは揺るがないし」
ぱっと彼の顔が真っ赤になる。
「うぅ、やっぱ僕はまだまだだ。いつか君にそれくらいの言葉を贈れるようになるから」
それもまたどちらでもいい。
私は彼が彼でいてくれればそれでいいし、私を好きでいてくれるなら言葉にしてくれなくてもいい。
でもさすがにこれに対しては彼の望む言葉を贈ってあげよう。
「うん、待ってるね」
「うん、任せて!」
彼が目を輝かせて力強く言った。
そんな彼を見て、たまにはきちんと期待して待ってみよう、とそう思った。
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