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小さな花の物語  作者: 燈華


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エレガンスと品位と移り気の花

「うわぁ」


きょろきょろと見回す。


「あっち? あ、でもこっち? あ、向こうも気になる」


目移りしてしまい、その場で足踏みする。


「少し落ち着け」


呆れたように言われ、ぴたりと動きを止める。


あまり勝手に動き回ると問答無用で止められる。

本当に首根っこを掴んで止められるのだ。


あれは恥ずかしいし、嫌だった。

私だって学習する。

自主的に手を差し出した。

まだ手を繋がれるほうがましだ。


「ん」


満足そうに頷いて彼は私の手を握る。


「それでまずはどこに行きたい?焦らなくたって順番に回ればいいだろう。時間はたっぷりある」

「え、えーとね、あっち!」


一番初めに目についたほうに向かう。等間隔に置かれている鉢にはダリアが植えられている方向だ。


「わかった」


手を繋いだままそちらに向かう。

わくわくに跳ねるように歩く。

彼は苦笑するだけで何も言わない。


可愛らしいダリアの鉢の前で思わず足を止めてしまう。

豆知識的思惑なのか、鉢には植わっている花の名前と花言葉が書かれている。


『ダリア 花言葉:エレガンス、品位、移り気』


「エレガンスとか品位とかは私には無縁だなぁ」

「両方とも落ち着きが必要だからな」


こくりと頷く。


「あ、でも移り気だけは合っているかも」

「そうか?」


彼が肯定しないことに驚く。


「君は好奇心旺盛なだけで移り気じゃないだろう」

「えっと?」

「だって、君は僕に一途でいてくれているじゃないか」


ぽんと顔が真っ赤になる。熱い。


「き、気づいて…….?」


言ったことはないのに。

態度に出していたつもりもない。


「当然。だってどんなにあちこちに興味を飛ばしていても最後には僕のところに戻ってくるじゃないか。小さい頃からずっと」


今すぐ逃げ出したいのに彼にしっかりと手を握られていて無理だ。


「知ってて、何で、私に付き合ってくれるの? 私の気持ちも行動も煩わしいと思うでしょ?」


彼はこれ見よがしに溜め息をついた。


「僕はどうでもいい人間に振り回されるのをよしとするほどお人好しじゃない」

「え、それって……?」

「こんなところで話したいことじゃない」


期待しても、いいのかな……?


彼が唇の端を持ち上げて笑む。


「時間は有限だぞ。全部回れなくなってもいいのか?」

「やだ!」


彼は本当に私の扱いを心得ている。

すっかりと気持ちはこの場を回ることに移っている。


「行こう」


彼の手を引っ張って歩き出す。


「まあ、いつかな」


小さく呟かれたその言葉は私には聞こえなかった。



読んでいただき、ありがとうございました。

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