穏和な花
穏和な人が昔から好きだ。
いつでも好きになるのは穏和な人ばかりだった。
それなのに。
今回好きになったのは自信満々で皆を牽引していくような俺様タイプの男の子だ。
きっかけなんて覚えてない。
気づいたら好きになっていた。
恋心に気づいた時は愕然とした。
何かの間違いでは、と思ったくらいだ。
自分が信じられなかった。
未だに信じられなくて事あるごとについ呟いてしまう。
私の呟きを聞いた彼が唇の端を上げて微笑う。
「自分の好きなタイプと違う人間を好きになったら、それはもう本気の恋だぞ」
「何でそんなに自信満々なの?」
「嬉しいからに決まっている」
「嬉しい? 自分がタイプじゃないと聞いても?」
「それなのに好きだと言ってくれているのに喜ばないはずがないだろう?」
「あ、あなたはどうなのよ?」
「うん?」
「私のこと、タイプ?」
「いや」
「じゃあ、私と同じね?」
「そもそも俺は好きな女のタイプなどない」
「何それ、ずるい」
「ただ、」
彼がすっと顔を近づけてくる。
その背後にあるハンギングバスケットの咲き誇る花魁草の花が何故か目に焼き付いた。
鮮やかなピンクの花が。
獰猛に目を細めた彼が私の耳元で囁く。
「お前が好きなだけだ」
その破壊力は抜群で、私は撃沈した。
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