私にふれないでの花
ぽんと頭に彼の手が乗る。
「もう子供じゃないの」
彼の手を払う。
お願いだから私にふれないで。私の心を揺らさないで。
心の中で呟く。
いつか私の恋心が鳳仙花の種のようにぱんと弾けてしまいそうだから。
それはあなたにとっても迷惑でしかないでしょう?
あなたにとって私はただの可愛い妹分。恋愛対象ではないのだから。
あなたに困ったような顔をされるのは嫌なの。
どうせ異性として意識されないのなら静かにこの恋を終わらせたい。
ただの妹分に戻りたいのだ。
手を払われても彼に気にした様子はない。
「ごめんごめん」
軽い口調で言って彼は手を下ろした。
まるで子供扱いだ。
ふいっとそっぽを向く。
別に拗ねているわけではない。
彼はきっとしょうがないと微笑って見ているに違いない。
そう思っていたのに。
真剣な声が落ちてきた。
「もう少しだけ、子供でいて」
「え……?」
思わず彼を見上げる。
彼の瞳が揺れている。
そこに浮かんでいる感情はわからない。
そんなの、見たことがない。
「そんな急に大人になろうとしないで」
懇願するような声だ。
あなたはずるい。
本当に。
そんなふうに言われれば私は頷くしかない。
小さく頷けば、彼はほっとしたように微笑う。
でも、きっと、いつかは私の恋心は鳳仙花の種が弾けるように弾けてあなたの前に姿を現すだろう。
隠しきれなくなった時に。
彼の笑顔を見ながらそんな予感に胸を震わせた。
近くの花壇に植えられている鳳仙花の種がぱんと弾けた。
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