強固の花
「わたしたちには強固な絆があるんだから」
「そう」
「わたしたちの間に入ってこないで」
「うーん、それは難しいかな。でも二人の間の絆を邪魔するつもりはないよ」
「だったら近づかないでよ!」
「うーん、それはできないかな。ごめんね」
「何でよ!」
「彼のことが好きだから」
「わたしのほうが何倍も何百倍も好きなんだから!」
「んー、それはどうかな? 付き合いの長さでは勝てないけど、気持ちは負けてないつもり」
「わたしのほうが大好きだもん!」
「うーん、それは譲れないかな」
「何でよ!」
「譲れないからだよ」
彼女は拳を握り、地団駄を踏む。
足音が聞こえてきた。
「お待たせ」
軽やかな声がかけられる。
彼女が嬉しそうにぱっと振り向いた。
酔仙翁を始めとした植物の苗がいくつも入っている段ボールを抱えてやってきた彼が彼女を呆れた目で見る。
「お前は全く何をしているんだ?」
「お兄ちゃん!」
彼女が彼に駆け寄る。
彼女はまだ小学四年生だ。
大好きな兄が取られそうで彼女は必死で私を追い出そうとしていたのだ。
子供相手に退かなかった私も大人げなかったかもしれない。
でも子供相手でも退けないことはある。
「また彼女に突っかかっていたのか?」
「つっかかってないもん」
「妹がごめんな」
「ううん。私もちょっと大人げなかったかも。貴方を好きな気持ちは妹さんにも負けないって思っちゃったから」
彼が口許を片手で覆って視線を逸らす。
「そ、そうか。俺も、君を好きな気持ちは誰にも負けない、よ」
「ふふ、嬉しい。ありがとう」
「うん」
「もー、わたしを無視してラブラブしないで!」
妹さんがぷんぷんと声を上げる。
「べ、別にラブラブしてないだろう」
「してたもん。仲間はずれにしないで」
「ごめんごめん。さあ花を植えましょうか?」
微笑って声をかければ、彼女は元気に「うん!」と頷いた。
もともと悪い子ではない。
時々、兄を取られる寂しさを感じてどうしようもなくなってしまうだけなのだ。
「早く! 早く!」
花壇の前で呼ぶ彼女に頷いてそちらに足を向けたのだった。
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