臆病の花
私は臆病だ。
この関係を壊すのが怖くて彼に告白できない。
ずっと一緒に育ってきた幼馴染み。
今でも家族ぐるみで仲がいい。
その関係を壊してしまったら……きっと家族も悲しむ。
それが言い訳だということは勿論自分でもわかっている。
でもこの関係を壊す勇気はない。
彼が気持ちを向けてくれている素振りか何かがあれば別だけど。
きっと彼にとって私は気の置けない友人くらいだろう。
近すぎて異性として認識されていない。
それがわかっているから一歩を踏み出せないのだ。
玄関先で白粉花が咲いている。
黄色とピンクの白粉花。
こぼれ種からも芽が出たりして小さい頃からずっとここで咲いている。
それをぼんやりと見ていた。
「今年も見事だな」
振り向けば彼がいた。
「毎年のことだからいつものこととしか思わないけど」
「そういうものか」
「うん。毎年変わらずあるものだからね。なくなって初めて気づくかもしれないね」
この白粉花がなくなる光景は想像できない。
もしこの先ここに白粉花がなくなった時に初めて心にぽっかりと穴が空くのかもしれない。
「それもそうか」
「うん……」
「お前も……」
「うん?」
「お前もいなくなるのか?」
目を瞬かせて彼を見た。
彼は何故か動揺しているようだ。
「そりゃあいつまでも一緒ってことはないんじゃない?」
どちらかに恋人ができたり、進学や就職で地元を離れたりしたらそのまま疎遠になることだって十分有り得る。
そして、傍にいるのがつらくなって離れるということも……。
「俺はずっとお前が傍にいるものだと思っていた。お前は違うのか?」
心臓がどくんどくん言っている。
私だってそう思っていた。
そうだといいな、と思っていた。
でも、彼に家族のような気持ちしか向けられていないと知った時、別離の未来も考えた。
彼が恋人を作って無邪気に紹介でもされたら耐えられないと思ったから。
「私もそうだといいなって思っていたよ」
彼がほっとした顔をした。
一度こぼれた言葉は止まらない。
続きもこぼれ落ちた。
「でも、私はあなたが好き。家族同然の関係はいつまでも続けることはできないよ」
思ってもいなかったのだろう。彼は目を見開いている。
「じゃあね」
私は急いで玄関に駆け込んだ。
そのまま閉まった扉を背にして座り込んだのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。




