無邪気な花
たまたま通りかかった公園の花壇に色とりどりの松葉牡丹が植えられている。
思わずその前で立ち止まる。
「昔は無邪気にこの花を摘んで、紙に色をつけたり、色水を作ったりしたなぁ」
懐かしい。
一緒にいた彼が首を傾げる。
「色水って?」
「知らない? 花を水の中で揉むと水が色づくんだよ」
「へー」
訊いた割には関心が薄い。
まあそんなものだろう。
彼は花への関心は薄い。
「行こうか」
「もういいの?」
「懐かしくて思わず足を止めちゃっただけだから」
「そっか」
二人で歩き出す。
彼が何気ない様子で言った。
「子供が生まれたら君はいろいろ遊びを教えられそうだね」
その言葉に動揺する。
きっと他意はない。
私が深読みしてしまっただけだ。
「どうかした?」
「え、あ、何でもない」
「そう?」
「うん」
言えるわけない。
子供と言われて彼との子供を考えただなんて。
彼も二人の子供を望んでくれたのかもなんて思ってしまったことなんて。
言えない。
「まあ、でも子供は結婚してからだね」
「ん?」
「だって着たいでしょ、ウェディングドレス」
「それは着たいけど」
彼を見上げる。
彼は悪戯っぽい笑みを浮かべている。
これは、確信犯的に言ったのだ。
「結婚しようか」
「うん」
手を繋ぐ。
派手なプロポーズではない。
だけどこれが私たちらしい。
読んでいただき、ありがとうございました。




