繊細な花4
わたしには片想いの男性がいる。
完全な片想いだと最初からわかっていた。
彼には大好きな恋人がいたから。
それを彼は隠すことはなかった。
だから彼の周りの者は皆彼に恋人がいることを知っていた。
仕事も休みの日曜日。
街中で彼の好きな相手を見た。
わざわざ見に行ったわけではない。
たまたま見かけたのだ。
だけどすぐにわかった。
彼が散々写真を見せて自慢してきていたから。
繊細そうな女性だった。
控えめに微笑うところに庇護欲さえ感じるのかもしれない。
心の狭い私はそうは思えないけれど。
彼女は一人だった。
傍に彼はいない。
だから声をかけることはなかった。
向こうは私のことを知らない。
見知らぬ人間から声をかけられるのは怖いだろう。
たとえ、恋人の同僚だと言われたとしても。
彼への印象も変わってしまうだろう。
良いほうにか悪いほうにかはわからないけど。
そんな博打は相手を怖がらせてまでやることではない。
それにーー。
よいしょと手に抱える唐糸草の鉢を持ち直す。
とりあえず、タイプの全然違う彼女を見れば私に希望は全くないとわかった。
「よーし、もっといい男を探すか」
だから。
「お幸せに」
風に乗せるように小さな声で呟いて歩き出した。
読んでいただき、ありがとうございました。




