情熱と快活の花
明るい彼の笑顔を眺めて目を細める。
彼は仕事に情熱を持っていて、快活で。
そんな彼をみんな好きになって当然だ。
私もその一人だ。
ひっそりと想っていられればそれでよかった。
その気持ちに嘘はない。
私が彼の目に留まるだなんて思えなかったから。
そんなの奇跡が起きないと無理だと思っていた。
地味で根暗な私のことなんて気にかけるはずがない。
視界の隅に入ったところで気づかれない。
本気でそう思っていた。
それなのにだ。
彼が私を見つけて手を振る。
私は控えめに手を振り返す。
彼が嬉しそうに微笑うのが見えた。
未だに信じられない。
彼が私のことを好きだなんて。
照れたように告白してきた時は夢なんじゃないかと思った。
その次は質の悪い悪戯ではないか、と。
中学校時代にそんなことが流行ったのだ。
クラスの片隅にいるような子に告白して、真剣に答えた子に対して嘘だと告げ、仲間たちと嗤い合うということが。
幸い私はそのターゲットから外れていたけど。
それなりに友人のいてくれたお陰だ。
まあそれもすぐに収まったのだけど。
噂がすぐに回ったからだ。
やっていた本人たちも声高に囀ずっていた。
学校からの注意も特に受けなかったらしいけど、誰も彼らの告白を真に受けなくなった。
だから本命に告白してまだそんなことをするのかと嫌悪の目で見られたとか。
彼らは自業自得だ。
ただそんな質の悪い遊びをするのが彼らだけとは限らないと、私たちの学年は恋人になる人たちがほぼいなくなった。
告白しても信じてもらえないかも、と余計に彼らは恨まれることになったのだけど。
大人になった彼らにとっては黒歴史になっているだろう。
なっていなかったら終わってる。
ターゲットにされなかったから傷にはなっていないと思っていたけど、裏表のない彼を疑ってしまったということは傷になっていたのだろう。
彼が駆け寄ってきた。
私は精一杯の笑顔で迎える。
「これを君に」
彼の手には赤い花が一本だけラッピングされて握られていた。
「カンナの花だ。花屋で見た時に君に贈りたいと思って」
「ありがとう」
笑みを深くして受け取る。
私には派手すぎる花にも思えるけど、彼が贈りたいと思ってくれた気持ちが嬉しい。
彼も嬉しそうに微笑む。
この奇跡がずっと続いていくようにと、心の中でそっと祈った。
読んでいただき、ありがとうございました。




