技芸の花
弾むような足取りで会場に向かう。
わくわくが止まらない。
肩にかけたカカリアの花が印刷されたトートバッグの紐をぎゅっと握る。
「楽しそうだね?」
「当然でしょ」
私が言えば彼は微笑った。
「どんなものがあるか楽しみ」
「君が楽しそうでよかった」
「まだこれからよ?」
「まあそうだけどね。僕は君が楽しそうにしているのを見られるだけで満足かな」
「志が低い!」
「そんなことないよ」
「だってこれから技芸を競った作品展を見に行くんだよ? その卓越した技能を堪能しなくちゃ!」
両手を握って力説する。
「それを堪能している君を僕は堪能しようと思うんだ」
「言っている意味がわからないよ」
私からしたら職人の技を堪能しないなんてもったいない。
私の姿なんていつでもいくらでも見られるものだ。
「まあ好きなものはずっと眺めていられるってこと。君だってそうだろう?」
「まあ確かに」
ちゃっと腕につけたブレスレットを翳す。
赤い花を中心に華やかで繊細な意匠のブレスレットだ。
これにも職人の技術が詰まっている。
「これだって、何時間だってうっとりと眺めていられるもの」
目を見開いた彼がすぐに破顔する。
このブレスレットは彼から贈られたものだ。
丁寧に作られたものが好きな私のことをしっかりとわかっている。
私は彼の手をぎゅっと握った。
彼もしっかりと握り返してくれる。
「楽しみだね」
「うん」
仲良くそのまま会場に向かった。
読んでいただき、ありがとうございました。




