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小さな花の物語  作者: 燈華


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煩悩と情熱の花

彼が何やら唸っている。

とっとっとっ、と近寄る。


「どうしたの?」

「今、煩悩と情熱の間で戦っているんだ」

「それって、同じカテゴリーじゃない?」

「え、違うよ」

「どこが?」

「煩悩は本能で情熱は気持ち、かな」


よくわからない。


「身勝手か、愛情かの違いかな」


うぅん、わかるようなわからないような。

腕を組んで首を傾げる。


「とにかく今煩悩と情熱の間で揺れているんだ」

「そう」


よくわからないけど頷いておく。


「まあ、だからあまり魅力的な格好をしないでほしいんだけど」

「ん?」

「だからもう少し露出を控えめにして。絶対そんな格好で外に出ないでよ」

「え? 今日帰るんだけど」


昨日彼の部屋にお泊まりして、明日仕事なので今日は帰るのだ。


「着替えて帰ってね。服ならクローゼットに入ってるから」


私は目をぱちりと瞬かせるとテーブルの上を指差した。


「この花が欲しいから悩んでいたんじゃないの?」


テーブルの上にはカタログが置いてあり、アンスリウムにマーカーで線が引いてある。


「違うよ。それはもう買うことが決まってる」


決まってるのか。

まあここは彼の部屋だ。何を置くかも彼の勝手だ。


「そんなことより、ちゃんと着替えてよね」

「あー、はいはい」


彼が言うほど露出は多くない。

だけど、まあ可愛いと思ってしまった。


私は彼の頬にちゅっとキスをすると、足取り軽やかにクローゼットへ向かった。

彼が唸りながらしゃがみ込んだことには鼻唄混じりで向かっていたため全然気づかなかったけど。




読んでいただき、ありがとうございました。

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