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小さな花の物語  作者: 燈華


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ひらめきの花

両手を上に掲げる。


「ひらめきよ、来い!」

「そんなので来たら苦労しないよ」

「来た!」

「嘘だろ!?」

「あ、今ので逃げちゃった」

「は? 本当にひらめいたのか?」

「本当だよ」

「だったらどんなことをひらめいたんだ?」

「だから忘れちゃったんだって」

「それ、絶対何もひらめいてないだろ」

「ひらめいたもん」

「嘘だ」

「嘘じゃないもん」


彼と二人のやりとりはまるでコントのようだとよく言われる。

たぶん彼のツッコミ体質のせいだと思う。

今日もまたどっと笑いが起きる。


「よっ! 夫婦漫才!」

「夫婦じゃない」


すかさず彼が返す。


「似たようなもんだろ」

「違う!」


そんなふうにいちいち反応を返すからからかわれるのだ。


「はいはい。いい気分転換になったよ」

「ありがとう」


そう言いながら皆三々五々に散っていく。

はぁと彼が溜め息をつく。


その横で私はさらさらと絵を描いていく。

じとっとした目で見られるが気にしない。

いつものことだ。


それよりもトレニアの花をメインに使ったアイテムのデザイン画を描くほうが忙しい。

思いついたアイディアが今度こそ逃げないようにすることこそ大切だ。


彼がはぁと溜め息をつく。


「俺、時々お前にとって俺は何なんだろうって思う時がある」

「え?」


思わず彼を見る。


「世界一大好きな人だけど?」


彼が机に突っ伏す。


「本当、そういうとこ」


彼が何故そんな反応を示すかわからない。

私にとってそれは自明のことだったから。


彼が顔を上げる気配はない。

私は首を傾げつつ作業に戻った。


彼が復活し、私の耳元で「俺も大好きだ」と囁いて私が微笑(わら)ってしまうのはそれからゆうに三十分は経った後だった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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