尊ぶの花
庭に紫露草の咲く日本家屋の中で私は彼に告げた。
「尊ぶ気持ちって大事だと思うよ」
ふいっと彼はそっぽを向いた。
私は言葉を重ねた。
「どんな関係でもものでも尊んでこそいい関係が築けるんだよ」
そっぽを向いたまま不貞腐れたように彼は言う。
「尊敬できないものはできないんだから仕方ない」
「尊敬と尊ぶことって別じゃない?」
「じゃあ尊ぶって何?」
「うーん、相手を尊重すること?」
「それも違わない?」
「そっか。え、どういうことだろう?」
わからなくなる。
「自分でも意味がわからない言葉を使って説教されても困るよ」
正論だ。
だがここで怯んではダメだ。
「私はただもっと周囲の人を大切にしてほしいだけ」
「まあ、それは、選別してるだけだよ」
思わず疑いの目で見てしまう。
「本当だよ。大事な者は僕の中で揺るぎないからね」
彼は蠱惑的な笑みを浮かべて私を見る。
これは作戦だ。
この話を終わらせるための。
それはわかっている。
わかっているけどーー。
「うぅぅ」
唸る私の顔はたぶん赤くなっている。
彼のその微笑みに私は弱かった。
それがわかっている彼はここぞという時に使ってくるのだ。
「ね、それで十分じゃない?」
彼が顔を覗き込むようにして訊いてくる。
まるで催眠術にかかったように頷いてしまう。
「……………………そうだね」
「じゃあこの話は終わりでいいよね?」
「……うん」
結局丸め込めれて話は終わってしまった。
読んでいただき、ありがとうございました。




