移り気な人の花
彼は移り気な人だ。
それでも私は彼が好きだ。
完全なる私の片想いだけど。
彼は蝶のようにひらりひらりと女性の間を飛び回っている。
でも移り気な彼は女性たちと長続きしない。
すぐに他の女性へと目移りして恋人を怒らせて破局するのもしょっちゅうだ。
だけど未練などないように見える。
彼は人には全くと言っていいほど執着しないのだ。
だけど不思議と私との友情だけはずっと続いており、破局するたびに私のところにやってくる。
今日もまたいつもと変わらない様子で私の前に現れた。
「やあ。ケーキ買ってきたから一緒に食べよう」
「じゃあ紅茶を淹れるよ。あ、珈琲がいい?」
「紅茶がいいかな」
「わかった。上がって」
「お邪魔します」
こういうところ、意外と律儀だ。
「そっち座ってて」
「皿出していい?」
「あ、もちろん」
私がお湯を沸かす横で彼は慣れた様子で食器棚から皿やフォークだけでなく、ポットやカップまで出してくれる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そのままキッチンでケーキを皿に載せる。
「持っていっておくね」
「うん」
魔法瓶のお湯でポットとカップを温めておく。
お湯を捨ててポットに紅茶の葉を入れた。
ティーパックではなく茶葉から淹れるのが好きだ。
お盆を出してポットとカップを載せた。
サントリナの絵柄のついたポットとカップ。
そういえばこれは彼がくれたものだ。
彼はよくよく私の趣味をわかっている。
こういうさりげない気遣いが恋心をくすぐるのだ。
意外と細やかな気遣いができるのに何故振られるのか……と疑問に思いかけて浮気するからだとすぐに思い直す。
気遣いできても浮気をするような男を結局選ぶことはないのだ。
お湯が沸いたのでポットに注ぎ、砂時計をひっくり返してお盆に載せる。
運ぼうとしたら彼にさっと取られてそのまま運ばれた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
向かい合ってケーキを食べる。
「もっと恋人を大事にしたら?」
「別に彼女たちとは付き合ってないよ」
「え?」
「来る者拒まずってだけ」
それは彼女たちに失礼なのでは?
「彼女たちだってそれはわかってるよ。だから去っていくんだけどね」
本気で彼を好きだから気持ちを向けられないのがつらくて去っていくのでは?
私だってーー
「ねぇ」
暗い思考に囚われかけたのを切られる。
彼に視線を向ければ存外真剣な目を向けられていた。
「僕が君だけは関係を切ることなく会いにくる理由をそろそろ考えてほしいな」
「え?」
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サントリナ「移り気な人」




