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小さな花の物語  作者: 燈華


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家族との融和の花

庭にはバーベナの花が咲いている。

父が好きだった花だ。

植物に特に関心があったわけではなさそうだったのにこの花だけは大切にしていた。


その父も一年前に病気で亡くなった。

無口な父だった。

どこかに遊びに連れていってもらった記憶もほとんどない。


「何であの花が好きだったんだろ」


リビングの窓際に立って何気なく言う。


「あら、知らないの?」


テーブルの上に麦茶の入ったコップを置きながら母が言う。


「え、お母さん、知ってるの?」

「もちろん知ってるわよ」

「え? 何? お母さんとの思い出の花?」

「違うわよ」

「え、違うんだ」


じゃあ何だろう?

他は思いつかない。


さすがに他の人との思い出の花ということはないはずだ。

それなら母がこんなふうに微笑(わら)っているはずがない。


「じゃあ何で?」

「あなたはあの花の花言葉を知ってる?」

「花言葉? え、知らないけど」

「"家族の融和"よ」

「へ? 何でそんな花言葉の花にしたの?」


母が優しい微笑()みを浮かべた。


「お父さん、自分が無口なことを気にしていたから。うまく娘たちと話せないって悩んでいたのよ」

「そっか」


そんなふうに思っていたのか。


「どうせなら"家族愛"とかの花にすればいいのにね」

「そこがお父さんなのよ」


母の目には確かな愛しさがあった。


「そうだね」


もっといろいろ話しておけばよかった。


「お母さん、お父さんのこと、もっと話を聞かせて」

「ええ、いいわよ」


窓辺から離れてテーブルの前に座る。

入れ替わるように母が立ち上がった。


「ふふ、その前にお菓子も持ってくるわ。ちょっと待ってて」

「うん」


母が足早に廊下へと出ていく。

母の目に涙が浮かんでいたのは見なかったことにした。


読んでいただき、ありがとうございました。

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