栄光の花
栄光という花言葉を持つグロリオーサからそっと目を逸らす。
栄光はすでに過去のものだ。
いや、本当にあったのかすら疑わしい。
そんなものは幻だったのかもしれない。
一時的に浮かれていただけで。
その時の光の欠片さえ今の私にはない。
「栄光だなんて、何の皮肉?」
思わずぽつりと呟いてしまう。
それを彼に聞き咎められた。
「過去をなかったことにするな」
「だってもうぼんやりとしている」
「そうだとしても、過去はなかったことにはならない」
「そうかな? どうせすぐに忘れられる一瞬の輝きなんじゃないかな?」
思わずそんなことを言ってしまう。
彼にじっと見られて居心地悪く視線を逸らす。
ふわりと彼に抱きしめられる。
私は驚いて彼の腕の中で目を瞬かせた。
「今のお前に重荷になるなら、忘れるのはいい。だが否定はするな」
「……うん」
もう誇ることはできないけど、否定することはやめよう。
否定することは彼の気持ちを蔑ろにすることになる。
それは嫌だ。
「誰が否定しようと俺は覚えている」
落ちぶれたなどと叩かれたことにも気づかれたようだ。
「過去や現在がどうであれ、お前はお前だ。俺はお前がお前であればいい」
私はただ黙って彼の言葉を聞いていた。
「だからお前が忘れたいなら忘れてしまえ」
「……うん、ありがとう」
ぎゅっと抱きつく。
私を抱きしめる彼の腕にも力がこもった。
彼と一緒ならこの先私は大丈夫だろう。
そう思えた。
読んでいただき、ありがとうございました。




