忠実と正義の花
少し離れたところに置いた蛍袋の絵を描く。
できるだけ忠実に。
無心に筆を走らせていれば、心が凪いでいく。
どんなに感情が乱れていても絵を描けば鎮まっていくのだ。
嫌な想いをした。
自分の正義を信じた連中に批判されたのだ。
過ぎた正義は害悪でしかない。
自分が正しいと微塵も疑っていないことが本当に厄介だ。
一方的な論理で糾弾し、一切人の話を聞こうとはしない。
まあ、私は彼らと話すつもりなどないのだが。
それが余計に火に油を注いでいるのかもしれないが、それでも疲れるだけのことに時間も自分も割きたくはないのだ。
あの手の連中はどうして自分たちの主張は聞かれるのが当然だと思っているのだろう?
他人の時間を奪うことに何の躊躇もない。
迷惑な話だ。
仲間内だけでやればいいのに。
他人のことは放っておいてほしい。
本当に。
そんな思考さえも気づけば溶けていた。
ただただ絵を描くことに集中していく。
「……できた」
筆を置く。
目の前のキャンバスには蛍袋の絵。
「まあ及第点かな」
蛍袋の鉢と見比べてそう結論づける。
まあいい。
練習を重ねていくうちに上達していくだろう。
集中して描いていたからか疲れてはいた。
でも頭はすっきりしていた。
頭の中からは不快な連中のことは跡形もなく消えていた。
読んでいただき、ありがとうございました。




