↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな花の物語  作者: 燈華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/245

望郷の花

出先で見かけて買ってきたサンダーソニアの花を飾る。


この花の花言葉が「望郷」だと教えてくれたのは祖母だった。

その時も今も望郷という言葉は私にとって遠い言葉だ。

望郷の念というものを私は持ち合わせていない。


親が転勤族で、故郷というものをそもそも持っていない。

一、二年ごとに引っ越しを繰り返していたから故郷と呼べるほど親しんだ土地はないのだ。


初めて長く暮らしたのはそれこそ大学に入学して一人暮らしを始めてからだ。

ようやく家に帰って自分の居場所だと思うことができるようになった。


だから望郷の念というものを(いだ)きようがない。

あれは故郷のある人が持つものだ。

だけど、この花を見る時だけはふと懐かしさを覚え、帰りたいな、と思うことがある。


同居している彼氏が言う。


「君はいつもその花を見る時だけ、心を遠くに飛ばしているよね」

「あー、この花、可愛がってくれていたおばあちゃんが好きだった花なんだ」


なかなかハイカラな祖母だった。

いやハイカラという言葉も死語か。

よく祖母が使っていたので、私の中の基本語に入っている。


「そうなんだ。ちょっと変わった花だよね」


私も初めて見た時にそう思った。


「あー、だね。ちょっと作り物めいているというか」


祖母にも初めて見た時にそう言った。

私がそう告げると、そこがいいんだよ、と祖母は微笑(わら)った。


ちょっとした、でも大事な思い出だ。

だからこの花を見ると懐かしい気持ちになるのだろう。


祖母は今伯父夫婦と暮らしている。

あの祖母の暮らしていた家はもうない。

懐かしさを感じる場所がふるさとならば、私にはもうふるさとと呼べる場所はない。


遠くなってしまい、仕事も忙しくて祖母とは随分と会っていない。


久しぶりにサンダーソニアの花を持って訪ねてみようか。

彼も誘って。


結婚を考えている人だと紹介したら、どんな反応を示すだろう?

きっと驚いた後で祝福してくれるだろう。

面食いだったのね、って悪戯っぽく微笑(わら)うかもしれない。


そんな祖母の笑顔をまた見たい。



読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。