個性美の花
「あー、もう全然うまくいかない!」
思わず叫んでしまった。
「どうしたの?」
彼が声に驚いたのか顔を出す。
「あ、ごめん」
「別にいいけど。どうしたの?」
「全然うまくできなくて」
どれどれというように彼が作業台の上を覗き込む。
作業台の上には今まで作業をしていた木彫りの人形がある。
木彫りのうさぎが桧扇の花を持っているものだ。
だけどどうもうさぎも桧扇の花も歪に歪んでいる。
手を加えれば加えるほど歪んでいくように見える。
でもあまり手を加えすぎると今度は取り返しのつかないことになる。
木彫りというのはやり直しがきかないのだ。
じっと見ている彼に言う。
「歪んでるでしょ?」
「それもまあ、個性じゃない?」
「うーん?」
その言葉にはもやもやする。
それに彼はすぐに気づいたようだ。
「気に入らない?」
「何でもかんでも個性とか個性美とか言われるのはちょっとな」
「そっか」
彼は再び木彫りに視線を戻した。
「でも僕はけっこう好きかも。気に入らなくて廃棄するならくれない?」
「まあ別にいいけど」
「ありがとう」
「じゃあ仕上げたら持っていくね」
「うん、楽しみにしてる。じゃあ頑張って」
「うん、ありがとう」
軽く手を振って彼は部屋を出ていった。
私は再び木彫りのうさぎに向き合った。
そう言われたのならこれ以上手を加えないほうがいいだろう。
彫刻刀の代わりにやすりを手に取る。
そして仕上げの作業に取りかかった。
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