愛らしさの花2
夏椿の柄の浴衣は可愛らしい。
黒縁丸眼鏡の地味なわたしにはこんな可愛らしい浴衣は似合わないと思う。
もっと愛らしい、笑顔の可愛い子でないと。
そう思うのに、彼が絶対似合うと譲らなかった。
だからわたしはこの浴衣を着る。
惚れた弱みだ。
浴衣は祖母に着方を習ったから一人ででも着られる。
白地に夏椿の柄の浴衣に江戸紫色の帯を締める。
ショートボブの髪にも夏椿を模した飾りのついたピンを刺す。
鏡で問題ないことを確認した。
あとは彼を待つだけだ。
今日はこれから花火大会に行くのだ。
そわそわとしながら彼を待つ。
彼が家まで迎えに来てくれることになっていた。
似合わないと言われた時のためにワンピースも用意してあった。
待ち合わせ時間まであと少しだ。
その少しが永遠のようにも感じてしまう。
待ち合わせ五分前に彼が迎えに来た。
おずおずと彼の前に立つ。
「どう?」
彼はにっこりと微笑う。
「うん、可愛い」
「あ、ありがとう」
「やっぱりその浴衣、君によく似合う」
「本当に?」
「嘘なんてつかないよ。本当によく似合っているよ」
「よかった」
ようやくほっとしてわたしも微笑った。
「準備はできてる?」
「あ、うん、できてる」
「じゃあ行こうか」
「うん」
巾着を持って外に出る。
鍵をかけて巾着にしまう。
そっと彼に手を取られた。
「転ぶと危ないから」
「あ、うん。ありがとう」
「といってただ手を繋ぎたいだけなんだけど」
「あ……」
顔をうつむけて頷く。
それでも赤くなった頬は隠せていないだろう。
「行こう」
「うん」
手を引かれて歩き出した。
読んでいただき、ありがとうございました。




