清浄の花2
白いカラーが硝子の花瓶に何本も無造作に入れられている。
ただそれだけだ。
それだけなのに。
清浄な空気がその周りには漂っている気がする。
呼吸さえ憚られる気さえしてくる。
「どうしたの?」
その声に呪縛が解けた。
「具合悪い?」
「ううん、そんなことないよ」
彼が顔を覗き込んでくる。
「顔色は悪くないか」
「だから大丈夫だって」
そう言っても彼は納得せず、何かを考えているようだ。
そしてはっと気づいたようにカラーを活けた花瓶を見る。
「もしかして、あの花、嫌い?」
「あ、ううん。そんなことないよ」
「でもあの花を見て様子がおかしい」
「ちょっと見入っていただけだよ」
「本当?」
彼が疑うようにじっと見てくる。
「本当だよ。どうして?」
「君はいつだって無理をして一人で抱え込むじゃないか」
私は微笑む。
「そんなことないよ」
「その顔」
「え?」
「いつもそうやって笑顔の下に何もかも隠してしまうだろう?」
「そんなことないよ」
彼の顔が苦しそうに歪む。
「そんなに僕は頼りないかな?」
「え、そんなことないよ」
驚いて否定する。
「なら何で頼ってくれないの?」
「え、頼ってるけど」
普通に頼っているつもりなのでびっくりする。
「そうか。自覚なしか」
彼が何かをぼそりと呟く。
「何?」
彼は先程の苦しそうな様子が幻だったかのようにいつも通りに微笑んだ。
「ううん、何でもないよ。お茶を淹れるよ。座ってて」
「あ、うん。ありがとう」
彼は私をソファに座らせてキッチンのほうに歩いていった。
私は首を傾げてその背を見送ったのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。




