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忍耐とあなたを信じますの花
珍しい写真を撮りに行ってくる。しばらく帰らない。
それだけを告げてカメラマンの彼は撮影に向かった。
家族や恋人にでさえ場所を教えてはならない、という契約だとかでどこにいるかもわからない。
まともに連絡も来ない。
それでもーー
忍耐強くあなたの帰りを待っています。
あなたを信じます。
心の中でそっと呟く。
まるで演歌のようだ、と自分で笑ってしまう。
昔はそんな女は何て馬鹿なんだろう、と思っていたけど。
今は彼女たちの気持ちが少しわかる気がする。
縋りついているわけではない。
自立しているからこそ待てるのだ。
少なくとも私はそうだ。
無事に帰ってきてくれればそれでいい。
まともな連絡もない状況が心配ではあるけど。
だからこそ忍耐強くなんて言葉が出たのだろう。
今度花菖蒲の描かれた便箋を使って彼に手紙を書こうか。
どこにいるのかわからないが、彼は私書箱の契約をしている。
その私書箱に出せばいい。
いつかは読むだろう。
きっと意味は伝わらないだろうとは思う。
それでもいい。
万が一、伝わったのならーーそれは、あちこち撮影に行く彼にとって最高のメッセージになるだろう。
読んでいただき、ありがとうございました。




