純潔の花
今日は私の結婚式だ。
ウェディングドレスに着替え終わって、今私は一人だ。
手伝ってくれた係の人が出ていったので、そのうち身内とか友人とかが来るだろう。
それまでのわずかな一人の時間だ。
さすがに緊張していた。
落ち着かない。
何となく置かれているブーケを見る。
ブーケには結婚式で使われる定番の花が使われている。
鈴蘭、かすみ草、 ブルースター、白いフリージア、白いバラ、ユーカリ。
純潔や幸福を花言葉に持つものばかり。
幸福を願って作られたもの。
私は、幸せになっていいのだ。
自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
ノックが聞こえ、「どうぞ」と返事をすると伯母が入ってきた。
「貴女の旦那さん、入ってきたそうにしていたから駄目よ、と追い返しておいたわよ」
「そう」
花婿はバージンロードで初めて花嫁のウェディングドレス姿を見るもの、というのが伯母の持論だった。
昔はそうだったのよ、と伯母は言っていたが本当かはわからない。
だけど育ててくれた大好きな伯母の言うことだから、と彼と話し合って、ドレス選びに彼は同行せず伯母に付き添ってもらった。
だけどどうやら我慢ができなくなったようだ。
目的を達成できずに追い返されてしまったみたいだけど。
「ふふ、綺麗ね。貴女の両親も天国で微笑っていることでしょう」
「そうだと、いいな」
「当たり前でしょ。貴女は皆に愛されているもの。貴女を愛していた両親がそれを喜ばないはずがないでしょ」
声が震えてしまいそうで、声も出さずに頷く。
伯母が優しい微笑みを浮かべる。
「幸せにおなりなさいな」
「ありがとう」
「泣いちゃ駄目よ? 花嫁さんは幸せに微笑ってないと」
「う、うん」
目が潤んでしまい、慌てて瞬きを繰り返して何とか涙を引っ込めることができた。
「ほら、微笑いなさい」
私は唇の端を持ち上げて微笑った。
「おばさん、育ててくれてありがとう。大好きだよ」
「……こんな大事な時に泣かせに来ないで」
「今伝えたかったのだもの」
「しょうがない子ね。素敵な女性に育ってくれてありがとう。私も大好きよ」
「……おばさんだって泣かせに来るじゃない」
「私も今伝えたかったのだもの」
二人で顔を見合わせて微笑んだ。
その目が潤んでいたことはお互いにそっと心の中へと仕舞った。
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