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幸福はきっとあなたのものの花
少し遠出した公園。
ここに杜若があると聞いてやってきたのだ。
どうしても見たかった。
杜若は先日亡くなった祖母との思い出の花だ。
公園の案内板を確認して公園内を進んでいく。
目的の場所は公園の奥のほうにあった。
浅く水を張った場所に水辺の花が植えられている。
桟橋のような遊歩道が整備されており、近くで花を見ることができるようになっていた。
ただあまり人気はないのか、人影はなかった。
わたしには好都合だった。
遊歩道へと踏み込んでいく。
杜若だけではなく、菖蒲や菖蒲も植えられている。
それでもわたしの目的は杜若だけだ。
菖蒲や菖蒲の脇を通り抜け、とうとう目的の花まで辿り着いた。
紫色の花びらに一本短く白い筋の入った花ーー杜若。
その前で立ち止まる。
ああ、この花だ。間違いない。
よく祖母の家で二人でこの時期に眺めていたもの。
祖母の大好きな花。
これが見たかったのだ。
そして、もう一つーー
「幸福はきっとあなたのもの」
こっそりと呟いてみる。
祖母とわたしだけの秘密の呪文だ。
うん、わたしは大丈夫。
おばあちゃん、一緒に唱えてくれた声が聞こえたよ。
読んでいただき、ありがとうございました。




