富貴の花
彼の家に遊びに行ったら掛け軸が飾られていた。
床の間という立派なものがあるわけではない。
壁にかけられていたのだ。
鮮やかな牡丹の絵だ。
彼が私の視線を辿り、見ているものに気づいた。
「じいちゃんにもらったんだ」
「お祖父様、趣味のいい方なのね」
ふわりと彼が微笑う。
「ありがとう」
きっと彼にとって大切な人なのだろう。
それが伝わってくる微笑みだった。
「綺麗な牡丹の絵ね。貴方が選んだの?」
彼自身の選択なのか、彼の祖父が選んだのか。
「牡丹は富貴の象徴だから持ってけってじいちゃんが」
「素敵なお祖父様ね」
きっと孫が豊かであるようにと願ったのだろう。
優しく愛情深い方だ。
「ありがとう。そうなんだ、じいちゃんはいろんなことを知っていておおらかで、僕の自慢のじいちゃんなんだ」
誇らしげな顔をしている。
きっとおじいちゃん子なのだろう。
私の顔にも微笑みが浮かぶ。
「聞いているだけでも素敵な方だと伝わってくるわね」
「嬉しいな。じいちゃんと仲良しだって聞くと嫌な顔をする人もいるけど君は平気なんだね」
「素敵なことだと思うわ」
彼の視線が掛け軸に向く。
「これだってじじくさい趣味だって言う人もいるんだ」
ということは他にもこの部屋に来た人がいるのね。
「見る目がないわね」
「ああ、そう言ってくれるんだね」
彼はますます嬉しそうだ。
大切な相手からもらって大切にしている物を貶されたら誰だって嫌な気持ちになるだろう。
それも含めて見る目がない。
掛け軸も、その掛け軸を大切にする彼もとても素敵なのに。
これもきちんと伝えておく。
「お祖父様のくれた掛け軸をきちんと飾る貴方も素敵だわ」
彼は目を丸くした。
だけどすぐに嬉しそうに微笑う。
そして、その笑顔を見て好きだなぁって思った。
読んでいただき、ありがとうございました。




