幕間 兄と弟
王城の王太子執務室。
そこに、王位継承候補3名が顔を合わせていた。
「今ここでなんかぶちこまれたら、この王族史終わるね〜」
あはは、と第二王子が不穏な事を呟く。ほんとうだ、怖いね、となんら恐怖を感じていない様子で王太子はシリウスに向き直る。
「ふふ、まさかシリウスからお願い事をしてくるなんてね」
嬉しそうに笑う王太子は、シリウスの頬を撫でた。
「気色悪い事すんじゃねぇ。…王族として戦場に立つなら、戦闘に特化した俺が出向くのがスジだろ」
「うん?南方への牽制だけで十分なんだよ、こちらとしては、ね」
払い除けられた事も気にせず、王太子は軽やかに笑った。
その言葉に、忌々しそうに舌打ちをしたのはシリウスだ。
魔物は聖女の力を持ってすれば、いずれは抑え込む事はできる。南方は隣国の侵略行為である為、国の国境問題に関わる。王家からすれば、極大魔法の使い手である、第三王子をわざわざ辺境へ送る理由はなかった。
現在、王国騎士団と魔法師団の半数を南方へ派遣した事により、南方戦線は膠着化。
シリウスは、事態を打破すべく南方へ自ら出征する事を、王太子に打診した。
その見返りに、辺境伯領への出征、極大魔法の行使…そして、南方国境戦線から辺境伯領への移動に、王太子の空間魔法を行使する事への許可を願いでた。
「ふふ、あはは!」
急に笑い出した王太子に、シリウスはピクリと眉を動かす。第二王子だけは軽薄そうに、ただ微笑んでいる。
「シリウスがこんなに必死なのは、スカルタス嬢との婚約解消の話が浮上した時以来だね」
ニマニマと第二王子も茶化すように、肩をすくめた。
「なーんか、おとなになっちゃって、オニーサマはさみしいよ」
チッと大きな舌打ちを一つ響く。出所を探るまでもなく、シリウスだ。
「ふふ、ようやく我儘の通し方が、分かってきたようだね。」
優しい微笑み、優しい声色、王太子はやんわりとゆったりとリラックスしたように、シリウスを威圧した。
「可愛い弟の頼みだから、聞いてあげたいんだが、旨味が少ないね。もう一つ、頼みを聞いてもらうよ?」
「…なんだ」
この優しげな王太子が、優しいだけではない事を、シリウスは知っている。
「そうだね、君とスカルタス嬢が結婚した暁には…」
「王位継承権を返上してもらおう」
にっこりと微笑む兄に、シリウスは小さく息を吐いた。
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