表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/33

戦場にて3

エリューシスを抱きしめたまま、現状での決定事項を簡潔に伝える。

抱きしめあっているのも忘れて、エリューシスは目を見開いた。

「このタイミングで、極大魔法を、ですか?」

それは、シリウスが明日極大魔法を行使する、という宣言だった。

「スタンピード前に、一度溢れた魔物を掃討する。その後魔の森に最接近して、出入り口から出てくる魔物をひたすらぶん殴る。戦力を分散させるより、その方がよっぽど効率良くいける。」

「でも、スタンピードまでに魔力は回復するんですの?」

「今まさに、炎魔法師の最盛期だぞ。雨季が過ぎて雨の心配も少ないしな。この気候ならその分回復は早ぇ。」

「確かに、炎魔法師の最盛期ですが…。戦場で魔力を枯渇させるなど、危険では…」

「枯渇させそうになってたヤツが言うな。」

「ひゃい…」

鼻をつままれたエリューシスは、むん、と唇を尖らせた。

その表情の変化を見て、シリウスは内心驚きを隠せなかった。奔放な様子もあったが、令嬢としての節度として、微笑みを常に絶やさなかった。表情をコロコロと変えるなど、幼少期以来だろうか。

感情を素直にオモテに出すエリューシスに、シリウスは嬉しさと、ほんの少しかの男(辺境伯)への嫉妬を感じた。

「ここにもう一人極大魔法の使い手がいるんだ。多少回復に時間がかかったとしても、問題ねぇだろ」

ニヤリと笑うシリウスに、エリューシスは顔を上げた。


「戦場にいるうちは、こき使うぞ」


「かしこまりました!」


シリウスに頭を撫でられ、エリューシスは少し照れくさそうに頬を染めた。




エリューシスを簡易寝台に寝かしつけ、シリウスはテントから出る。数メートル先に辺境伯が立っていた。

「おや、もういいのですかな?あと半刻は待ちますぞ」

「チッ 余計な気を回すんじゃねぇよ」

朱殷の髪を乱暴に掻き乱す姿に、辺境伯は意地悪そうに笑う。

「さてさて、老い先短い私も、殿下の安寧のお姿と、スカルタス嬢との神の福音を見たいものですなぁ!冥土の土産に!」

「殺しても死なねえ、不屈のガルデルドが何言ってやがる」

闊達に笑う辺境伯に、シリウスはジト目で睨みつけた。


「お前、エリューシスを惚れさせたらしいな?」


「……。ややっ殿下。老いると耳も遠くなるので不便でたまりませんな!殿下の炎魔法は素晴らしいですが、嫉妬の炎はただ暑苦しいだけですぞ」

不敬罪を知らぬヤツがここにもいる、とシリウスはますます睥睨したのだった。





**



魔法の極致。

極大魔法。

広範囲かつ絶大なその魔法。


生命力とも呼ばれる魔力を、最大限に引き出した、究極の魔法。




「まさか、生きているうちに、お目にかかれるとは」

野営の騎士達は色めき立つ。疲労にまみれていた昨日までとは、その表情は一変していた。

「シリウス殿下!万歳!」

「エリューシス王子妃殿下万歳!姫様万歳!」

「おいっまだご婚約者のお立場なんだぞ。気が早すぎるだろ」

「これでご結婚なされなかったら、オラぁ王家に殴り込みかけそうだ。」

「違いねぇ!」

「お前ら不敬だぞ!…まぁ俺もそうだが」

酒が入っている訳でもないのに、饒舌な騎士達。辺境伯は軍議用のテントまで漏れ聞こえてくる声に、はぁと軽くため息をついた。

「今やスカルタス嬢を、戦乙女、姫神だと崇める者もおります。」

「ハッ!あのお転婆が、姫神とは大層な呼び名がついたな。」

「そのうち殿下も軍神と呼ばれそうですなぁ。はっはっはっ!」

一を返したら、三で返って気分だ。シリウスはげんなりしながら、辺境伯以下貴族や、騎士団長を見据える。


「戦場の騎士や兵士らに、姫神と呼ばれる。それ程の獅子奮迅の働きをなさっておられましたよ」

「そうです!スカルタス嬢のご助力より、どれ程の騎士達の命が助かったことか…」

「ご令嬢をこのような戦場へ立たせてしまう、我らの不甲斐なさたるや…」

「必ずや殿下並びに、スカルタス嬢への恩義に報いましょうぞ」

軍議に並ぶ貴族や騎士団長、そうそうたる人物らがギラギラした圧をシリウスへかける。

その心は

『絶対スカルタス嬢を離すんじゃねえぞ!泣かせたら容赦しねえ!その時は、反旗翻すのも辞さん!!』である。

すっかりエリューシスは、この屈強な戦場の男どもを篭絡したようで、シリウスは頭痛を感じた。



「当然だ。エリューシスに救われた命。しっかりアイツの為に生かせよ」


悪辣に笑うシリウスに、軍議に参加していた全員、同じように笑った。




お読みくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ