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17 初めての勇者と商人と

 40階ボスを倒した後、俺たちは1度戻る事にした。

 ボス部屋奥にある転移門で1階まで戻り、外に出た。


 入り口近くに有る兵士詰め所隣の水場に、勇者達が居た……

 頻りに顔を洗いながらギャーギャーと騒いでいる。

 気が付かれる前に足早にこの場を去った……


 因みにトラさんとハンゾウは外套のフードの中…… 気に入ったようだ……




 島に戻り、皆で居間でお茶中……


「そいえば、あるじはなんで勇者キライにゃ?」


「んー?勇者かぁ…… 最初は冒険者ギルドで会ったんだっけ?」


「でござるな。 最初からいけ好かない輩でござった……」




 そう。 ナディアさんに、人間社会を見て回るなら身分証を持った方がいいと言われ、冒険者になろうと王都まで行ったんだ。

 身分証無いと入場時にお金取られるとも聞いてたので、森や街道付近でお金集めたんだけど。

 

「1つずつ集めたにゃか? すごい根気にゃ!」


「まさか。 範囲指定して『落ちてて使える貨幣来い!』って念じれば手元に集まるよ。 結構落ちてるよ」


「むちゃくちゃにゃ!」


 そんな感じで王都への一歩を踏み出したんだが、冒険者ギルドに入った時にね、例の如く絡まれまして…… 

 まぁ子供みたいな背丈ですし、ラノベお約束のパターンだからちょっと予感はしてたんだけどね。


「ガキが何の用だ。 さっさと帰って家の手伝いか薬草(クサ)毟りでもしてろ」


 ハゲたガタイのいい男に絡まれる。


「あのー冒険者登録に来たんですけど……」


「お前みたいなのがか? そんなヒョロイ体つきで冒険者舐めてんのか!」


「君ねぇ、此処は戦闘集団のプロが揃う組織なの。 冷やかしなら帰ってくれない?」


 大男に続いてギルドの受付嬢も参入。


「え、誰でもなれるって聞いたんですけど?」


「君馬鹿? 子供まで相手してるハズ無いじゃない。 戦える人ならって事なのよ」


「おい! ギルドの受付嬢を困らせるな!」


 其処に現れたのは綺麗な鎧を身に着け、銀色の豪華な剣を持った金髪イケメン。


「此処は託児所じゃない! ギルドは毎日忙しいんだ! ガキはさっさと出て行け!」


「そうですね。 ただでさえ、このわたくし達を待たせてるのですから」


 そう言ったのは、金髪の後ろから出てきた白尽くめのドレスを着た銀髪の女。


「ちょっと! まだ査定終わらないの!? こんなガキ相手してないでさっさとやりなさいよ!」


 小柄な紫ローブのピンクブロンド髪の女がギルド受付嬢に怒鳴り付ける。


「この小僧が私達を待たせる原因なのか?切り捨てるか……」


 それ鎧か? ってほど地肌の見えた鎧を着た赤髪の女が俺を睨みつける。


「ああー! はい! 今やってますから! ちょっとブル! もうそのガキ放り出して!」


 ギルドの受付嬢の叫び。

 それを聞いたブルという大男は、俺の胸倉を掴み、持ち上げ、入り口から俺を放り投げた。

 投げられた俺は道をコロコロ転がり向かいの壁にブツかって動きを止めた。


「2度と来るんじゃねぇ! 無能なガキが!」


 そう言い捨てて中に戻る大男。 まだ何もしてないのに無能って……


《はっはっは。 見事にやられたでござるな》


 パタパタと転がる俺の元に飛んできたハンゾウ。なぜ嬉しそう?


《いやー、ラノベではよくある光景を、実際やる立場になるとは思わんかったわ》


《鉄板ネタでござるからな。 で、どうするでござる?》


《んー、冒険者がダメなら…… 有名どこだと商人かね?》


《そうでござるな。 此処が北国でござるから、島で育てたマンゴーやらパパイヤやらが売れるのではござらぬか?》


《あーそれいいね。 その手でいくか……》


《持ってるでござるか?》


《いあ、今から島戻ろう》


《戻るのはいいでござるが…… 周りが凄い事になってるでござる……》


 壁に激突し、横になったままだった俺の周りには人人人……

 「大丈夫かい?」心配する女性。 「また冒険者か!」憤慨する男性。 「子供になんて事を……」涙を流す老婆……

 慌てた俺は勢いよく立ち上がり、


「スイマセン! 大丈夫です! ご迷惑をお掛けしましたー!」


 脱兎の如く、ピューっとその場から逃げ出した……




「当時は知らなかったけど、これが勇者と最初の出会いだったかな」


「さいしょの出会いから最悪にゃ……」




 んで島からマンゴー・パパイヤ・ドラゴンフルーツなど、それぞれ5個ずつ持ってきた俺は商人ギルドへ向かう。

 其処は冒険者ギルドよりも大きく、前の広場には馬車が行き交い、中に入れば商人で溢れかえっていた。

 人混みをかき分けて、番号札を手に取り、受付から呼ばれるのを待った。

 そして30分程経ってやっと呼ばれた俺の番号。

 受付に行くと若い兄ちゃんが。


「すいません。 行商人として登録をお願いしたいんですが」


「ん? 君いくつ? 商人登録は金貨2枚掛かるんだが持ってるの?」


 なんだろう…… 冒険者の時もそうだけど、何処の受付もこんな感じ悪いのかな?


「はい。 持ってますけど…… ちなみに17です……」


 年齢は適当に。


「ふーん。 んで何を売り買いするんだ? 薬草とかなら冒険者で買い取ってもらって」


「これを売ろうかと」


 そう言ってマンゴー・パパイヤ・ドラゴンフルーツを1つずつ取り出し、受付の前に置く。


「なんだこれ? いい匂いだし、フルーツか? あーでもダメダメ。 こんな訳わからん物売れやしないよ。 もうこれ以上子供の遊びに構ってられないんだからさっさと帰ってくれ」


 面倒臭そうな態度で手に持ったマンゴーを転がす受付の男。

 そのマンゴーが隣で商談している商人の手元まで転がっていった。

 マンゴーを手に取った商人。 その顔がみるみる驚愕の表情に変わっていく。


「な! これはマンゴーじゃないか! 君! これはどうしたのかね!?」


「いやぁ…… 僕のスキルで運んできたんですけど…… こんなの売れないって今断られちゃったんですよ……」


「馬鹿な! 南国のフルーツが生で運ばれてきたのに売れないはずないじゃないか!」


「なんだって!」


 驚く受付の男。 そして突然の大声に周りに人が集まる。


「でも子供の遊びと思われたみたいで…… 商人登録も出来ないみたいなので、諦めようかと」


「君は見る目が無いのか? 南国フルーツを生で此処まで持ってきた商人が今まで居るか?!」


 商人の男は受付の男に指差し罵倒する。


「一体何の騒ぎなの!?」


 ギルド奥から現れたのはエルフの美人さん。


「おおギルド長。 これを見てください」


 商人の男の手からマンゴーがギルド長の手に渡る。


「ほぅ…… 生のマンゴーじゃないか。 生のまま持ち込まれるのは初じゃないか?」


「ええ、そこの少年が持ち込んだんですが、そこの職員が子供の遊び、こんなの売れないと」


 ギルド長に睨まれた受付の男は顔面蒼白である


「登録出来ないなら持ってても仕方ないので、ある分皆さんで試食しませんか?」


 おー!っと盛り上がるギルド内。

 残りのフルーツを出し、皿とナイフをギルドで借り、パパパと切り分けてゆく。


「どうぞー」


 その声と共に群がる商人・ギルド職員・グルド長。

 受付の男は、動けずに下を向いたままだ。


 食べてる人々の顔は、皆笑顔だ。


《ハンゾウが育てたのは凄いな。 皆笑ってるよ》


《うむ。 育てた甲斐があるってもんでござる。 でも身分証が手に入らなかったでござる……》


《仕方ないさ…… 最悪は透明化すりゃ何処でも入れるしな》


 ハンゾウと念話中にギルド長が近寄って来た。


「ウチの職員が大変失礼をした 。謝罪させていただく」


 と言って頭を下げてきた。


「そして是非取引をしたいと思っている。 思う所もあるだろうが、是非登録をして頂きたいのだが如何だろうか?」


「それは願ってもない話ですが、よろしいので?」


 俺は受付で項垂れる男の方を見る。


「これ程の商品を見逃して、子供だと軽く扱ったのだ。 これからは裏方に回る事になるでしょう……」


「分かりました。 ではよろしくお願いします」


「では奥で商談と参りましょう。 此方へ」


 


 こうして俺は南国フルーツぼったくり商として、商人ギルドに登録したのだ。


お読みいただきありがとうございました。



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