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16 目的地到着 塩は引き締めます

「いやーあんなに臨機応変に動けるとは思ってなかったよ」


 10階のボス部屋を後にし、11階の適当な部屋を見つけ只今昼食中。

 今朝作って来たハンバーガーにフライドポテト。 そしてフレッシュミックスジュースである。

 キャンプ用の4人掛け簡易テーブルでお行儀良くもぐもぐタイム。


「修行の成果でござるな」


 人型になって食事をするハンゾウが、隣のトラさんの頭を撫でる。

 ニパーっと笑顔のトラさん。


 聞いた修行内容は至ってシンプルだった。

 箱型の結界を張り、その中に永久的に跳ね続けるボールを入れて延々と避けさせたらしい。

 避けるのに慣れたら、体術を使って弾き返す訓練をしたそうだ。

 最高でボールの数は300を超えたらしい。


「ほーう。凄いなトラ!想像以上でビックリだわ」


「にゃははー てれるにゃ……」


 手を伸ばし、頭を撫でてやる。 ウチの教育方針は褒めて伸ばすである。




 食事も終わり、活動再開。

 マッピングしながらどんどん進む。

 ここらの敵も、褒められテンションアゲアゲのトラさんの敵ではない。


 順調に進む事17階。

 遂にヤツ等を発見してしまった……


「うわぁ…… 気分わるぅ……」


「勇者達でござるか…… 面倒でござるな……」


 俺のテンションサゲサゲでゴザール……


「にゃ? あの先でたたかってるよわっちーの、ゆうしゃにゃ?」


「うん…… あのよわっちい男が勇者……」


「あるじはゆうしゃキライにゃ?」


「どーでもいい。 関わりたくない。 弱い癖に勇者の恩恵で贅沢してるイヤなヤツ」


「にゃふ…… それはイヤなヤツにゃ……」


「トラを抱っこして、消えて行くでござる」


「そうするか……」


 トラを抱っこし、ハンゾウを肩に乗せて透明化する。

 そしてそっと戦う勇者達の横をすり抜け、先に進もうとした時。


(ちょっと降ろしてにゃ)


 トラさんが小声でお願いしてきた。

 その手には、油性マジックが……


 そっとトラさんを降ろす。 離れた事により解ける透明化。


「な! なんだあの黄色い魔物は!」


「知らないわよ! みんな構えて!」


 突然現れた黄色いトラさんに驚く勇者達。

 とその時、トラさんが消えた。

 勇者達に緊張が走る!

 シュッシュッと何か書く音が聞こえ、1秒もしないで元の位置に戻って来たトラさん。

 キュッとキャップを付け、俺の方に両手を上げ抱っこのおねだり…… 超かわええ……

 そして抱っこされた事により再び消えたトラさん。

 再び勇者達に緊張が走る!

 見てしまった! 緊張し警戒している勇者達の額にある文字を!


 勇者には【種馬】

 聖女には【エロ】

 魔法使いには【淫乱】

 戦士には【絶倫】


「「ぶほっ!」」


 思わず吹き出してしまう俺とハンゾウ。


「誰か居るのか!?」


 きりっとした顔で辺りを警戒する勇者。 だがその額には種馬って……


 もうね、ヤバいんで逃げました。

 耐えられそうも無かったんです。 俺もハンゾウも……

 つかトラさん。 どこでそんな言葉を……


「なんかマジック持つと浮かんでくるにゃ。 意味はわからないにゃ……」


 分からないままで居てください……




「なんかこのまま隠れて行けばいいかなーって思えてきた」


 18階への階段の手前でポツリと呟く。


「いいのではござらぬか? 目的は40階以降でござろう?」


「戦わなくていいにゃ?」


「トラさんも弱い敵じゃ張り合い無かろう? 地図がちっと勿体ない気もするが……」


「それこそ各階でサーチでもして図に起こせばいいでござろう? 細かく書く必要も無いでござる」


「あら手厳しい。 でもそれでいいか……」


 取り敢えず、この17階をサーチする。

 地形を把握。 お、宝箱の位置も分かるじゃん! 何故もっと早くに使わなかった……

 紙に地図をささっと書きだす。

 宝箱は気になるが勇者に遭いたくないからなぁ…… 17階は諦めるか……


「んじゃ40階まで隠れて行くからトラさんは休憩だなー」


「りょうかいにゃー」


 と言ってトラさんは俺の身体をそそくさと登り、俺の外套のフードの中へ。

 身体を丸めるトラさんの上にインコハンゾウもIN。


「なんだよその、現地着いたら起こして。 みたいな感じは……」


「その通りにゃ。 そして寝る子は育つにゃ」


「でござる」


 ご主人に任せて寝る眷属って……




 1人寂しく各階をサーチし、地図にし、宝箱を回収してます……

 宝箱トラップで爆発しようが……

 モンスタールームで大暴れしようが……

 ボス部屋ではっちゃけようが……


 起きやしねぇ…コイツ等……




 そしてやって来ました40階のボス部屋前~


「おら、起きろ! 40階だぞ」


「にゃふ…… むにゃむにゃふ……」


「ふぁぁ…… やっとでござるか……」


 俺1人に任せといてやっとってどういう事じゃ!

 トラも何時までも寝てるんじゃねぇ!


 大人な俺はその言葉をグッと飲み込む…… だって逆切れされたら怖いじゃん……


「んじゃ入るぞー」


 石の扉を押し開ける。


 其処に居たのは、水色半透明な身体にオレンジの核を持つアメーバーのような魔物。

 エンペラースライムっていう魔物らしい。

 不定形な身体は5m以上の範囲に広がりウネウネと動いている。

 その身体から滴り落ちる液体は、地面に垂れるとジューっと白い煙を出していた。


「さて、トラさん。 取り敢えずやってみようか?」


「まっかせるにゃー!」


 休んで気合十分なトラさんは、スライムの核に向かって分銅を投げつける。

 が、ゼリーの様な身体に阻まれ、分銅は身体の中で勢いを止める。

 それを見たトラさんは鎖鎌でスライムを斬り付ける。 がみるみるうちに再生する。


「それなら魔法にゃ!」


 得意な火系の魔法から広域魔法を選び、放つトラさん。

 スライムの全身を包む業火。 だが、火が消えた後に何事も無かったように佇むスライムの姿が…

 そしてジリジリと捕食しようと寄って来る。


「効いてないにゃ……」


 俺の方に振り返ったトラさんの目がウルウルしていた……


「あーコイツは鑑定で見たけど、物理はダメ、魔法も耐性ありなようだ。 戦うなら氷魔法で全体を凍らせ、物理で氷を削って核を破壊するか、全体を一気に消滅出来る程の大規模魔法くらいか?」


「どっちも出来ないにゃ!」


「んーまぁ仕方ないね。 これは相手が悪い。冒険者が突破出来ないのも分かるな」


 そう言って俺は、収納空間から1つの小さな壺を取り出す。

 蓋を取り、中に有る白い砂状の物を掴み、スライムに投げつけた。

 白い砂の掛かった所から白い煙だ立ち上がる。

 それに驚いたスライムは動きが慌ただしくなる。

 お構いなしにどんどん白い砂を投げつける。

 そして煙を出しながら小さくなってくスライム。

 そして遂に、スライムの核が露出した。


「さあトラさん。 あの核をバーンっとやっちゃって」


「にゃ!? にゃにが起こってるにゃー!?」


 混乱しながらも分銅を核に向かって投げるトラさん。

 そして パリーン!っと核が飴細工のように簡単に砕け散った……


「そ、それはいったい何にゃ!?」


「此れは塩でござるな」


「せいかーい。塩で溶けるんだってさ」


「にゃー! そんなの分かるかー!」


 トラさんのシャウトが部屋にこだました………


お読みいただきありがとうございました。



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