表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/33

32 結託

談笑に花を咲かせていた4人だったが、アマヤの一言によって、ユーミーとミズカゲにとっては残酷な現実へと引き戻された。

ちょうど数分前に『寄る辺の灯火』という蛮族団によってあっけなく崩壊した、ユーミーをリーダーとする蛮族団『パンクパンク』。周囲に散らばった拠点の残骸が、えもいわれぬ哀愁を漂わせていた。


「はぁ....聞いてよアマちゃぁ~ん!もう酷かったんだよ!!」


ユーミーがここまでの経緯をつらつらと語りだす。

やれ『寄る辺の灯火』のリーダーである金太郎は無愛想で酷いとか、一目散に脱退したメンバーは無情だとか。


「そんなことがあったんですね」

「そりゃあ、散々だったなあ....!」


穏やかな笑みを見せるシナナキの表情が、同情するというよりかはどこかほくそ笑んでいるようなのは、『パンクパンク』には気づかれていないようだった。


「けど!ねえ!ここまで仲良く話したんだからさ、ねぇ?」


分かるでしょう?と、笑顔で問いかけるユーミーに。

なんのことだ?と、分かりやすくシナナキが首を傾げる。


「そうでござるよ。ここは一つ、手を組むというのはどうですかな?『パンクパンク』は歓迎しますぞ」

「まあ、そういう話だよな。けど────それは断る」


白い歯を見せきっぱりと言い放ったシナナキ。

悩む様子すら見せない即断。

ユーミーもミズカゲも、あっけらかんと言葉をつまらせた。


「.....そ、そこをなんとか!ねえ、コッチだって結構粒ぞろいだよっ?シナナキ君が無理でも、アマちゃんはほら私達の仲でしょ~?」


『パンクパンク』としては、絶望の淵に見た小さな希望だったか。

額に汗を滾らせつつ、手を擦り合わせて身を寄せるユーミーに、アマヤは目を伏せため息をついた。


「入ります、と言いたいところですけど。ユーミー、私達も既にチームがあるんですよ。わたしたち以外にもメンバーがいますし」

「......そうでござったか」

「うへぇええんっ!そんなぁ~...嘘だぁー.....!」


顔をクシャクシャにして、鼻水を垂らすユーミー。


「じゃ、じゃあさっ!ミズカゲ氏。こっちが向こうに入っちゃうってのはどうかな?!いいじゃん!人数が増えるだけなんだよっ?私もミズカゲも良い戦力だと思うんだけどなぁ~っ?」

「ポコロイ氏はどうなるでござるか?」

「んー?まぁ大丈夫でしょっ!」

「おい!勝手に入ろうとしてんじゃねえ!」


二人きりで話を進める『パンクパンク』に、シナナキが声を上げる。

『パンクパンク』がシナナキのチームに併合するというのは当初の予定とは全く違うからだ。


「お願いだよぉーっ!ねぇ、いいでしょ?」

「拙者からもお願いするでござる」


必死に懇願する二人に、シナナキは悩んでいるか、押し黙った。アマヤもまた、口をつぐんだままシナナキの答えを待った。


「────わかった。いいだろう」

「え?!本当っ?!!」


歓喜に声を上げるユーミー。

飛び跳ねて嬉しそうな表情を浮かべているところに、シナナキが声を上げる。


「ただし!.....お前らはあくまでも『パンクパンク』として、だ」

「どういうこと......?」

「俺達の目的は端から、言い方は悪いが『パンクパンク』を利用して『商売』をすることだった。それこそ、お前らみたいな実力者が揃っている蛮族団だと聞いていたからな」


それを言っちゃうの?!と、驚きを隠しきれない様子のアマヤ。しかしシナナキは当然、ミルクがマッチポンプを企んだことまでは話さない。


「なるほど....“名のある蛮族団から信用を得ている”という構図が欲しかったのですな」


理解の早いミズカゲが、意図を汲み取って話を先に進める。


「そうだ。俺達は『パンクパンク』と仲良くなりたかった。当たり前だが、蛮族同士は仲間じゃないから信用が重要だ。商売なんかは特にそうだろ?で、有名な蛮族団から信用を得ていれば、他の蛮族からも信用を得やすいからな」

「そこで拙者たちは『パンクパンク』として協力してほしいと」

「特にミズカゲ、お前はそういうの得意だろ?」

「フッフッフ、勿論。情報収集や交渉などはお手の物ですな」


と、自信満々にメガネを光らせるミズカゲ。


「実質的にはウチに入ってくれていいが、表面上ではパンクパンクとして今まで通りにやってほしい。勿論、そっちの立ち上げはサポートしてやるからさ」


突然雰囲気の変わった会話に、目を回していたユーミーが口を開く。


「なんだかわからないんだけど、要するに仲間にしてくれるってことでしょ!」

「ああ。俺達は商売の協力をしてほしくて、お前たちは仲間が欲しいし立ち上がりの協力が必要。利害は一致してるな」

「そうですな。ただ、立ち上げをサポートする...とは具体的に?」


ミズカゲの言葉に、シナナキは待っていました。とばかりに、顔をニヤつかせた

そしてインベントリを漁るような仕草をした後──────。


「これを見ろ!」


ジャララァーン。

と、両手を広げ瓦礫の周りにシナナキがアイテムを広げだした。拠点に帰った際にアイテムを整理し、このときのためにシナナキが持ってきたものだ。


「こ、これは......すごい量の装備ですな...!!」

「全部初期装備だ。これも信用の証として話しておくが、俺は『スリ』っつう他人のアイテムを奪うスキルを持ってる」

「す、スリぃ....?!」


驚くユーミーのそばに近寄り、シナナキがぽんと肩に触れる。


「こうして直接、手で相手に数秒触れることで発動できる」

「ええっ!.......ってあれ?」

「ん?何も──────」


そこで、ユーミーが思わず声を上げる。


「あ.....うん。全部失ったんだったね」

「.......ああ」


ユーミーも、ミズカゲも、ちょうど『寄る辺の灯火』によってコテンパンにやられた後だった。

プレイヤーが倒されればこのゲームでは所持しているアイテムをその場に落とすことになるので、二人の持ち物は当然空になっていた。


「ま、まあ『スリ』の事は分かりましたぞ!ええ、これだけの装備を我らに投資してくださるのなら、本当にありがたいことですな!」

「そうだねっ!!全部失ったけど、むしろプラスかもしれないよっ!へへっ!」


開き直るユーミーに苦笑いを浮かべつつ、シナナキが『パンクパンク』の二人へとチームの招待を送った。


「取り敢えず、よろしくな」

「ユーミーさんとミズカゲさん。よろしくお願いします」

「やったーっ!やったよーっ!もうだめかと思ってたよーっ....!」

「拙者、俄然やる気が燃えてきましたぞ!」


今度は歓喜に涙を零すユーミーと、両の拳を力強く握り熱意を滾らせるミズカゲ。

『パンクパンク』の二人が、シナナキのチームに加入したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ