32 結託
談笑に花を咲かせていた4人だったが、アマヤの一言によって、ユーミーとミズカゲにとっては残酷な現実へと引き戻された。
ちょうど数分前に『寄る辺の灯火』という蛮族団によってあっけなく崩壊した、ユーミーをリーダーとする蛮族団『パンクパンク』。周囲に散らばった拠点の残骸が、えもいわれぬ哀愁を漂わせていた。
「はぁ....聞いてよアマちゃぁ~ん!もう酷かったんだよ!!」
ユーミーがここまでの経緯をつらつらと語りだす。
やれ『寄る辺の灯火』のリーダーである金太郎は無愛想で酷いとか、一目散に脱退したメンバーは無情だとか。
「そんなことがあったんですね」
「そりゃあ、散々だったなあ....!」
穏やかな笑みを見せるシナナキの表情が、同情するというよりかはどこかほくそ笑んでいるようなのは、『パンクパンク』には気づかれていないようだった。
「けど!ねえ!ここまで仲良く話したんだからさ、ねぇ?」
分かるでしょう?と、笑顔で問いかけるユーミーに。
なんのことだ?と、分かりやすくシナナキが首を傾げる。
「そうでござるよ。ここは一つ、手を組むというのはどうですかな?『パンクパンク』は歓迎しますぞ」
「まあ、そういう話だよな。けど────それは断る」
白い歯を見せきっぱりと言い放ったシナナキ。
悩む様子すら見せない即断。
ユーミーもミズカゲも、あっけらかんと言葉をつまらせた。
「.....そ、そこをなんとか!ねえ、コッチだって結構粒ぞろいだよっ?シナナキ君が無理でも、アマちゃんはほら私達の仲でしょ~?」
『パンクパンク』としては、絶望の淵に見た小さな希望だったか。
額に汗を滾らせつつ、手を擦り合わせて身を寄せるユーミーに、アマヤは目を伏せため息をついた。
「入ります、と言いたいところですけど。ユーミー、私達も既にチームがあるんですよ。わたしたち以外にもメンバーがいますし」
「......そうでござったか」
「うへぇええんっ!そんなぁ~...嘘だぁー.....!」
顔をクシャクシャにして、鼻水を垂らすユーミー。
「じゃ、じゃあさっ!ミズカゲ氏。こっちが向こうに入っちゃうってのはどうかな?!いいじゃん!人数が増えるだけなんだよっ?私もミズカゲも良い戦力だと思うんだけどなぁ~っ?」
「ポコロイ氏はどうなるでござるか?」
「んー?まぁ大丈夫でしょっ!」
「おい!勝手に入ろうとしてんじゃねえ!」
二人きりで話を進める『パンクパンク』に、シナナキが声を上げる。
『パンクパンク』がシナナキのチームに併合するというのは当初の予定とは全く違うからだ。
「お願いだよぉーっ!ねぇ、いいでしょ?」
「拙者からもお願いするでござる」
必死に懇願する二人に、シナナキは悩んでいるか、押し黙った。アマヤもまた、口をつぐんだままシナナキの答えを待った。
「────わかった。いいだろう」
「え?!本当っ?!!」
歓喜に声を上げるユーミー。
飛び跳ねて嬉しそうな表情を浮かべているところに、シナナキが声を上げる。
「ただし!.....お前らはあくまでも『パンクパンク』として、だ」
「どういうこと......?」
「俺達の目的は端から、言い方は悪いが『パンクパンク』を利用して『商売』をすることだった。それこそ、お前らみたいな実力者が揃っている蛮族団だと聞いていたからな」
それを言っちゃうの?!と、驚きを隠しきれない様子のアマヤ。しかしシナナキは当然、ミルクがマッチポンプを企んだことまでは話さない。
「なるほど....“名のある蛮族団から信用を得ている”という構図が欲しかったのですな」
理解の早いミズカゲが、意図を汲み取って話を先に進める。
「そうだ。俺達は『パンクパンク』と仲良くなりたかった。当たり前だが、蛮族同士は仲間じゃないから信用が重要だ。商売なんかは特にそうだろ?で、有名な蛮族団から信用を得ていれば、他の蛮族からも信用を得やすいからな」
「そこで拙者たちは『パンクパンク』として協力してほしいと」
「特にミズカゲ、お前はそういうの得意だろ?」
「フッフッフ、勿論。情報収集や交渉などはお手の物ですな」
と、自信満々にメガネを光らせるミズカゲ。
「実質的にはウチに入ってくれていいが、表面上ではパンクパンクとして今まで通りにやってほしい。勿論、そっちの立ち上げはサポートしてやるからさ」
突然雰囲気の変わった会話に、目を回していたユーミーが口を開く。
「なんだかわからないんだけど、要するに仲間にしてくれるってことでしょ!」
「ああ。俺達は商売の協力をしてほしくて、お前たちは仲間が欲しいし立ち上がりの協力が必要。利害は一致してるな」
「そうですな。ただ、立ち上げをサポートする...とは具体的に?」
ミズカゲの言葉に、シナナキは待っていました。とばかりに、顔をニヤつかせた
そしてインベントリを漁るような仕草をした後──────。
「これを見ろ!」
ジャララァーン。
と、両手を広げ瓦礫の周りにシナナキがアイテムを広げだした。拠点に帰った際にアイテムを整理し、このときのためにシナナキが持ってきたものだ。
「こ、これは......すごい量の装備ですな...!!」
「全部初期装備だ。これも信用の証として話しておくが、俺は『スリ』っつう他人のアイテムを奪うスキルを持ってる」
「す、スリぃ....?!」
驚くユーミーのそばに近寄り、シナナキがぽんと肩に触れる。
「こうして直接、手で相手に数秒触れることで発動できる」
「ええっ!.......ってあれ?」
「ん?何も──────」
そこで、ユーミーが思わず声を上げる。
「あ.....うん。全部失ったんだったね」
「.......ああ」
ユーミーも、ミズカゲも、ちょうど『寄る辺の灯火』によってコテンパンにやられた後だった。
プレイヤーが倒されればこのゲームでは所持しているアイテムをその場に落とすことになるので、二人の持ち物は当然空になっていた。
「ま、まあ『スリ』の事は分かりましたぞ!ええ、これだけの装備を我らに投資してくださるのなら、本当にありがたいことですな!」
「そうだねっ!!全部失ったけど、むしろプラスかもしれないよっ!へへっ!」
開き直るユーミーに苦笑いを浮かべつつ、シナナキが『パンクパンク』の二人へとチームの招待を送った。
「取り敢えず、よろしくな」
「ユーミーさんとミズカゲさん。よろしくお願いします」
「やったーっ!やったよーっ!もうだめかと思ってたよーっ....!」
「拙者、俄然やる気が燃えてきましたぞ!」
今度は歓喜に涙を零すユーミーと、両の拳を力強く握り熱意を滾らせるミズカゲ。
『パンクパンク』の二人が、シナナキのチームに加入したのだった。




