二十六話 公園での再会
(えー……)
担任の口からテストという言葉が発せられた時、思わず逃げたくなるような衝動に襲われた。
(まだ二学期始まったばっかなのに……)
『嫌だ!』『帰りたい!』『勉強したくない!』の三連符。怠惰な自分が、こころの中で盛大に叫ぶ。
しかし、テストはテスト。どれだけ嫌がろうとも、最終的には向き合わなければならないのが学生の沙汰だ。
中学のころも、赤点を回避するのに精一杯だったというのに(まったく赤点を取っていないわけでもなかった)、それを高校になっても続けなければならないなど、なんたる地獄なのだ。
――といった風に、ハクはテスト時期になると、毎回このような考えに陥ってしまう。
勉強を教師たちにやりたくもないのに無理強いされるのが嫌で、今までほとんど勉強という勉強をしてこなかった。
中学のときの面談でやたらと担任が成績成績と口にするもので、勉強にはうんざりしていた。
自分は皆と違う。特別なのだという――いわば信念のようなものがあって、周りが勉強に勤しんでいる中、自分だけそれを避けようと必死にもがいてこれたのはそれがあってのことだった。
ホームルーム終了後の放課後は、テストの話題で持ちきりだ。
皆、不満を述べ合っている。
「もうテストとか早くない? まだ二学期始まったばっかじゃん!」
その意見には大賛成。自分の不満不平を代弁してくれる彼、彼女らの発言は何とも聞き心地がいいというものである。
しかし同時に、なぜだか家に帰りたい気分になった。
自宅へ到着。
久しぶりにCDでもかけようと、少し浮ついた気分で扉の取っ手を握った。
ガチャンッ。
しかし当然のことながら、扉は開かない。
「そうだった」ハクは鍵を取り出そうと、バッグに手を突っ込んだ。――のだが、
鍵が……ない。
(うわ……。多分机に置いたままだ)
鍵、ちゃんと持っていかないと知らないからね――そんな母のセリフは、もう飽きるほど聞いてきた。だからこそ、毎度確認するのを怠ってしまう。まぁすべては自分の責任なのだが。
仕事中の母に鍵がないといちいち泣きわめいても時間の無駄だとわかっていたので、家に入るのは即座に諦めることにする。
「散歩でもしよう」
結局、自宅を離れ住宅街周辺をうろつくことに。
歩いていると、自然と何かしらの考えが浮かんでくる。普通に生活していたら、絶対に考えもしないような、そんなくだらないことばかり。
けれど、そんなくだらないことを考えている時間が好きだった。何だかテストのような面倒くさいことが、急にどうでもよく思えてきて。
そして気づけば結構な距離を歩いていることに気づく。いちいち時間など見ていなかったから、いったい何分歩いたのかはわからないが、ここが大体通学路の半分くらいの位置であるのは周りを見てわかった。
ここの辺りで引き返すか――そう思った矢先、自分の足が疲れに注意がいく。
普段、運動をしていないからその分疲れが来るペースが早い。
感覚的にこのまま引き返せば足が持たない気がした。
「休憩できる場所探さないと」
この辺りで一休みできる場所と言ったら、公園くらいなものか。
ハクはその公園へと足を運ぶことにした。
△△ △
「………」
そのすぐ後のこと。
屋根付きの休憩スペースに、誰かいるとは思っていたが、まさかそれが知り合い――しかも彼女であるとわかった瞬間、体が石のように固まった。




