25・2
あれから、二週間が経った。
すみれは、特に何か変わった行動を起こすこともなく、日々を過ごしていた。
部活には当たり前のように参加し、段々と活動も本格的になり始めている。
今までよりも会話する頻度が多くなったからか、智也とは前よりも少し親しくなった。
今までほとんど会話をすることがなかった陸とも、依然として彼は物静かであるが、多少話したりすることがあった。
こんな形ですべて時間が解決してくれればと、すみれは叶わない願望に思いを馳せていた。
彼女は今、教室棟の隣にある自販機にいた。
横にある長椅子に腰かけ、両手にかったばかりの緑茶のペットボトルを握っている。無意識に、小さなため息がこぼれる。
すみれは、持っていた緑茶を横に置くと、ポケットから携帯を取り出した。
あれから、ハクとは何もなかった。本当に何も。メールも、言葉一言すら交わしていない。
スクリーン上にあるメールのやり取りも、二週間前に送った質問のメッセージで止まっている。その返事はいまだ返ってきていない。
(やっぱ、行動しないとダメなのかも)
今までよくもまあ、『時間が解決してくれる』などとほざいていられたものだと、愚かな自分を滑稽に思うと同時に、このままではいけないという危機感に苛まれていた。
しかし行動を起こすにしても悩ましいところである。メールでは大方無理だと察しがつくし、かと言って対面で直接声をかけるとなれば、また逃げられかねない。
結局、まともな打開案など見つからないまま昼休みは鐘の音ともに終わりを告げた。
(次、部活か……)
目前に迫った五、六限の授業などないも同然のように、すみれは放課後の部活のことを考えていた。
『すまん、今日から期末の勉強しねぇとさすがにやばいから今日は家に帰る。やりたいなら二人でやっててくれ』
ホームルームが終わって間もないころ、携帯に目を向けると、演奏部宛に智也が連絡を入れていた。
『今日するか? 部活』
たった今、陸から個人でのメールが送られてくる。
『私も勉強したいから、今日は部活なしでいい?』
すぐに陸から、『わかった』と返事が返ってきた。
中間試験が一週間くらいにまで近づくと、学校から部活動を中止するよう命じられるのはどの学校でも同じこと。
中間試験は来週の明日。つまり実質今日までが、部活動を行える日だったのだ。
以外にも、智也は見かけによらずマメらしい。
たいていの人間は『勉強しなきゃ』と口にはするものの、テスト直前まで手がつかず、結局一夜漬けをするか、あるいは何もしないのどちらかに落ち着くものだ。
きちんと逆算して計画的に勉強をしてるのだろうか、智也は。だとしたら彼の印象はがらりと変わる気がする。
自分もメールで、『勉強がしたい』と呟いた。けれどそれは嘘。自分は前者の方。つまり、テスト直前までほとんど手をつけない側の人間。
皮肉なことに、自分は成績がいい。頑張って、必死こいて勉強している生徒たちよりもいい成績を取ってしまう。
授業で一回目を通してしまえば、だいたい覚える。
テスト前の勉強というのは、テスト前日に目を通すだけの――言ってしまえばとても簡易的なものでしかなった。
それでも自分は毎回学年の席次が一番になったり、ぎりぎりならなかったりというような成績に収まっている。
きっと周りより優れた記憶力を持っているのだろう。
別に、その記憶力に誇りみたいなものはまったく持っていない。
それはただ、親から遺伝的に受け継いだものでしかないのだから。そんなの誇ってはいけない。自分で努力して、掴みでもしない限り。
頭がいい人は、(自分は頭がよいとは微塵も思っていない)勉強ができない人に対してなぜできないのだろうとそんな疑問を抱くらしいが、自分からしてみればそれはあまりに馬鹿々々しいことに思えた。
(もうそんな時期か)
気づけば、季節はもうすっかり秋。今まで校外に植え付けられてあった木々は、あんなにも色濃く緑色に染まっていたというのに――今ではそのほとんどが枯れ葉として地に落ちている。
すみれは階段を降り昇降口で靴に履き替えると、さっそく帰宅することにした。
母親聞かれても「テストだから」と答えれば、そのまま家に帰えることもできたのだが。
すみれは家には帰らず公園へと向かった。なんとなく、家に帰る気がしなかった。
とはいえ公園の椅子に座ったところで特にすることはない。家にいるときみたく携帯をいじって時間を潰すのみだ。
いつごろ帰ろうか――携帯をいじりながらそんなことを考えていた時、自分がいる付近に枯れ葉を靴で踏みつける音が聞こえてきた。
こんな時間帯に公園に訪れる変わり者などいるのかと、少し以外に思いながら身を音がした方へと向ける。
それと瞳が大きく開かれるのは、ほぼ同じタイミングだった。
「ハク……!」




