15・2
――バンッ!
室内に音が鳴り響く。刹那、静粛が訪れた。
「………!」
ハクは目を見張った。
まるで妖怪にでもとりつかれたような顔で。
全員がこちらを見ている。
皆目を丸くし、まったく状況が飲み込められていない様子だ。
しかし自分から感じ取れるものは、焦りや緊張ではなかった。
ただ、予想を裏切られたような意外感だけがそこにあって。
「ハク……」すみれは言った。
「どうして……! ここに……」
智也と陸もいる。二人とも、ギターを手にしていた。
さっきから聞こえていた淡いアコースティックギターの音は、正真正銘この部屋からだったのだ。
「それ……!?」
すみれの前にはキーボードがあった。一体、いつの間にそんなものを用意したというのか。
「あーこれ」すみれは周りを見渡す。「先生からここの学校は元々似たような部があったって聞いてね。それであっという間に楽器と機材が揃っちゃった。ほんと幸運だったよね、私たち」
すみれは周辺を見渡しながらそう説明した。
巨大なアンプも、それにドラムセットまで用意されてある。
そういえば、先生が機材のことをあれこれ言及していたことを思い出す。
「ハク、メール見た?」すみれが再びやさしい口調でハクに尋ねてきた。
「メール?」
ハクは何のことやらと頭を惑わせながら答える。
慌てて携帯を取り出すと、
(そういえばあのとき……)
二通――すみれからのメールが来ていた。
すみれが今説明したような内容が連れられていた。
「おい、ハク」智也が口を開いた。「昨日送ったやつ見たか?」
「……はい、見ました」
「あの曲、聴いたことあるか?」
ハクは眉を歪めた後、すぐに首を横に振った。
「いえ、初めて聴きました」
「……そうか。もう覚えたか? ……ってまだ早過ぎるか」
「………」
「とりあえず、おまえカラオケにでも行ってこいよ。おれらはおれらで演奏の練習するからよ」
何となく勢いに呑まれ、「はい」と答える。
踵を返し、部屋を出ようとすると再び智也が口を開いた。
「あ、カラオケはいったん家に戻って私服に着替えてから行けよ。学校にばれたら面倒だからな」
「……わかりました」
パタン。
そっと、扉を閉める。
果たして最後まで、自分はあの先輩たちに愛想よく接していられていただろうか。
必死に頑張る後輩をちゃんと演じられていただろうか。
そのことだけが頭の中に募るばかりだった。




