十五話 変な予感
翌日、寝不足のまま学校に登校した。
いつもみたく授業を受け、そのまま昼休憩に突入。
何となく弁当箱を手に取ろうとしたその時、突然携帯の振動がなった。
『今日図書室来れる?』
皆がいる教室の中、思わず頭を抱えたくなる。
今は――今は駄目なのだ。
『すいません。今日用事があって』
罪悪感が姿を現す前に、半ば強引に送信ボタンを押した。
(ごめんなさい)
激しい自己嫌悪が自分を襲う。
それを無視しようと、荒々弁当を口にする。
再び通知が一件、二件と送られてきた。
多分、すみれから。
あまり見る気が起こらなかった。
まぁそれでも良いのかもしれない。
内容はほとんど見当がつくし、むしろここは見ない方が用事があると言ったことへの現実味が上がって――
……ああ、ばかばかしい。
なぜだ。
なぜ、そこまでして自分の嘘を肯定しようとするのだ。
自分でも、この気持ちの整理がつかない。
己の行動原理さへも理解できなくて、いったい何をしたいのかと自分に問うてみても返ってくるのは、ただ炎のように淡淡していて言語化不可能な概念的で抽象的な感情そのもの。その感情はさらなる疑問を生み出し、ますます自分を混乱に貶めた。
△△ △
「まだ二学期始まって間もないと思うが、今月末には期末テストがある。わかってるよな、授業で習ったことがそのままテストで出題されるってこと。だから特に日ごろ低い点を取っている生徒は今の段階からきちんと一つ一つの授業に気合を入れていくようにな。自分のためだぞ」
テストなどと忌々しい単語を聞いたおかげで、さらに鬱憤な気分になってしまった。
さっさと家に帰ろう。
歌の練習をしなくては。
早く、早く――。
昇降口に移動し下駄箱から靴を取り出そうとしたその時、急に指先が凍るように止まった。
「え……」
玄関口の向こうから、聴き馴染みのある音が聞こえてくる。
まるで以前からその音色を知っていたかのように、その音はすっと耳の中へと入ってきた。
それが、問題だった。
――おかしい……おかしい!! その音はあってはならないのに!!
(なんで……!? なんで!?)
ハクは帰り際の生徒の群れの中を狂騒と抜け出した。
廊下のフローリングの上を疾走する。
走るな!――そう、誰かが言った気がする。が、気にせず走った。
音は近づくに連れて、みるみる大きくなっていく。
瞳は瞬きを忘れ、充血を伴った細かな血管が張り巡らされる。
心臓の鼓動は今にも張り裂けそうなくらいに激しかった。
呼吸はその鼓動をも追い越そうとした。
病人のようにかすれ始めている息の音は傍からみると異常でしかない。
だがこれを一刻も早く確かめたい――そう思う一心で。
それが間違いでないと確信した時、ハクはその場に立ち止まった。
膝に手を置いて息を整えた後、勢いよく目の前の引き戸を開ける。
――バンッ!




