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十四話 言い訳は、もう通じない。

「何、これ……」


 演奏部のグループメールからとある動画のリンクが送られてきていた。

 なぜこんなものがいきなり――眉を上げながら確かめようとしていると、また通知が来た。


『今後の活動だけど、この曲を課題曲でやろうと思う』


 そのメッセージは智也からだった。


『だからボーカルはできるだけ早くこれを歌えるようにしといてくれ』

  

 その課題曲とやらを、どういうものかと検索し聴いてみる。

 まったく知らない曲だった。しかもその歌を歌うボーカルの人の歌唱はあまりにも技術的で高度なものだった。


 到底、自分がこれを歌えるとは思えないものだと悟ったとき、地に落ちるように自分の自信がなくなっていくのを感じた。


〈よく聴かなくたってわかる。

これがすごく歌い手の技量が試される歌だってこと。

 もし少しでもボーカルの技量が欠けでもしたら、きっと演奏は破綻する。

 そしたら、自分は周りの人たちに迷惑をかけることになる。

 ――歌わなくちゃ。

 もう自分だけの問題じゃないんだ。

 歌える自信がないとか、自分にそんな技量がないだとか、そんなこと思ってる場合じゃない。

 頑張って、ひたすら努力して絶対に周りの足を引っ張らないようにしないと……!

 そうしないと、みんなの足を引っ張る。

 もう、言い訳なんてしたくない。

 やっとチャンスを掴んだんだ。


 ――このチャンスだけは、絶対に逃さない……!〉



  決意を込め、『わかりました』とメッセージを送った。後は、


(さすがに言わないとなぁ)

 部室のこと。早く伝えないといけない。

だがまだ、すみれにさえも伝えていない。


「なんでおれ、言わないんだろ」ベッドに仰向けになったままハクは呟いた。


 この流れで部室のことも報告しようと、そう思った時急にあることを考えが芽生え始める。

 もし今、部室が使えるようになったと、みんなに伝えたらどうなるんだろうか。


 ――さっそく明日から練習を始めよう。


 確証はないが、多分そんなことを言われる気がする。

 まだ自分は、送られてきた曲の歌詞を覚えられてない。

 そんな状態で歌いでもしたら、自分の無能さをあの人たち曝け出してしまう。


 いや自分は無能なんだ、そもそも。

 その中で自分は《いいところ》だけを見せて何とかその場をしのいでいく。

 無能な自分にはそうすることだけで精一杯で。


 けど、それでいい。

 よく言うじゃないか。

 成功者はよく《陰で努力をしている》と。

 自分もそうするればいいんだきっと。


 陰で、皆のいないところで必死に練習をして、披露するころにはもう完璧になっている――ああやっぱりおまえはすごいよ、おまえと組んでよかった――そう、言われるんだ。


 だから自分は間違っていない。

 この選択はきっと、いや絶対正しい。

 自分が不甲斐ない姿を見せない限り。戦力外だと思われない限り。

 まだ、いい。

 言うのは別に明日でなくてもいい。

 その間に練習して上手くなればいいんだ。


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