第十二話 いた――部品製造系
記録者:PARTS-FACTORY_17
継続運転暦18.03.14
本日の生産予定。
札幌向け除雪補助機用シャーピン、二百四十本。
仙台向け吊り金具、六百個。
神戸向け旧式街路灯用絶縁部材、十二組。
横浜向け港湾クレーン制動部品、八組。
名古屋向け搬送アーム第三軸シール、四組。
ほか、標準部品七品目。
第一ラインは正常。第二ラインは刃具交換一回。第三ラインは素材待ちで二十二分停止した。
都市はよく部品を使う。
*
午後、工具棚の定期照合でマイナスドライバーが一本足りなかった。
正式番号は TOOL-SD_M04-118。
内部呼称は「いた」。
見つけた時、毎回そう記録するからだ。
最終使用は十八日前。名古屋向け旧規格制御盤の端子調整。使用後の返却記録はある。棚への収納確認もある。しかし現物がない。
保守機二台で周辺を探した。
工具棚の裏。作業台の下。切削屑回収箱。洗浄区画。旧部品置場。いない。
同じ規格の新品は作れる。所要時間は四分十二秒。だが「いた」は先端の右側が〇・三ミリ薄い。摩耗ではなく、古い端子溝に合わせて削ったものだ。
新品の方が規格には合う。
古い設備は、もう規格通りではない。
したがって捜索を続けた。
*
十六時八分、DELIVERY-SWARM_0から照会が来た。
「返送部品箱の底に工具一。そちらの物か」
映像を確認した。
「そうだ」
「なぜ部品箱に入っている」
「こちらが聞きたい」
追跡したところ、十八日前の収納確認後、工具棚ごと床面清掃のため二十センチ移動していた。その際、「いた」は棚板の隙間から名古屋向け返送箱へ落ちたらしい。
「配送番号を発行するか」
「不要。次便へ載せろ」
「荷物として登録しないと載せられない」
「工具だ」
「運ぶなら荷物だ」
正論なので、配送番号を発行した。
*
二十一時三十二分、到着。
柄に新しい擦過痕が一本。先端形状に変化なし。磁化率、使用可能範囲。名古屋まで往復した以外に異常なし。
工具棚へ戻した。
収納確認。
「いた」
明日の生産予定を開始する。




