↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

#27 鎧の魔人

 ズシンズシンと歩を進める、その振動がこちらまで伝わってくる。

 遠くに見えるは鎧を纏い、筋骨隆々の燃えるような赤い体に赤い瞳、そして剣を握った魔人だ。

 その背丈は俺たちの倍はあるだろう。

 あれを見て、隣に並び立つデメルが口を開く。


「カイル、あれをどう見る」


「俺たちでやれるかはかなり怪しい。交戦して無事に生き残れたら御の字ってところだ」


「やっぱそれくらいはあるよな……」


 デメルが渋々納得しているあたり、こいつの見立てでもかなり厳しいらしい。

 冒険者ギルドから、強力なモンスターが王都の壁の外に現れたということで、今いるA級2人で先頭に立っているが、ここまでとは聞いていない。

 アリアは連絡兼遊撃兼雑用係として隠してあるものの、遊撃は期待できそうにない。

 背後にB級以下の冒険者も控えてはいるが、こちらも当たるのは難しいだろう。


「あれが街に入ったらヤバイぞ。周りの奴らは何やってるんだ」


「城まで破壊し尽くされるだろうな……」


 他人任せだがデメルの不満もわからないでもない。

 ザルドレの城は国の中心にあり、外側へ広がるように村や街が点在しており、強力なモンスターは外側で活動する冒険者により倒されるため、城の近くまで来るということはない。

 が、こうして来ているということは、止められなかったのだろう。

 王都にいるA級冒険者が少ないのも、王都近辺は安全という理由からだ。

 ゆえにこうした事態が起きた際の対応は困難を極める。

 あともう一人この場にはいないが。


「ミレイスもいたら話は違ったが」


「呼んだ?」


 口に出せば、横から返事が。

 振り返ればそこには、A級冒険者のミレイスその人が立っていた。

 A級の中でも上位に位置する彼女がいれば……。


「来てくれたか、助かる」


「期待してるところ悪いけど、私が一人じゃ部の悪い賭けになる。あれには、せめてもう二人は私と同等のA級が必要かもしれない」


「……」


 悔しいが同じA級ではあるものの、カイルとデメルではミレイス二人分とは見なされないらしい。

 だが贅沢は言ってられない。

 魔人がすぐそこまで歩みを進めてきている。


「俺とデメルで注意を引いてミレイスの攻撃を通す! デメルは正面を頼む!」


「力関係からしたらそうなるわな。ミレイス、あんただけだ頼りだ。任せたぞ」


「まあやるだけやってやるわ」


 それぞれ散開して魔人と対峙する。

 ミレイスは魔人の背後へと回り、魔力のチャージを開始し、デメルがその図体に似合わず飛び上がり、大上段から大剣の一撃を繰り出すが、魔人もこれを剣で難なく弾く。だがデメルも姿勢を崩すことなく、そのまま魔人と打ち合い始める。

 だがデメルが劣勢であることは明らかであり、そのために二人で来たのだ。

 俺も魔力を流した片手剣で魔人を横から切りつけるが、浅くしか刃が通っていない。これで切れない相手は初めてだ。

 しかしこちらにも注意が向いた。

 そして襲い来る魔人の剣。


「フローズンシールド!」


 これを魔法の盾で防御すれば、一撃で壊れてしまったが、一撃は無効化できるらしい。

 フローズンシールドを連続で使用することで、剣の連撃に対応する間も、デメルがこちらを向いている魔人を削る。


「デメル! どんな感じだ!」


「消耗はしてるだろうが、やっぱ俺らじゃ無理だ! ミレイスしかねえぞ!」


 話していることでデメルの方にも気を向けたか、一転デメルへと標的を変えた魔人。


「フローズンシールド!」


 そこでデメルの前に盾を発動し、振り向きと共にあった鋭い一撃をいなす。

 二人を襲う攻撃に合わせてシールドを発動し、なんとかしのぐ中、初めて魔人が声を上げた。


「貴様ら人間が朱を湛えた秘宝を隠していることを知っているぞ! 俺は失ったそれを取り戻しに来た! 返すつもりはないということだな!」


 秘宝だと? 心当たりはないが、恐らく王都のどこかに宝が運び込まれたというところだろうか。

 しかし心当たりはない、渡して穏便に追い返すことが敵わないのならば、倒すほかない。

 デメルと二人で巨人の攻撃を引き受けること数分、チャージをしたミレイスの準備は整っていた。


「飛ばすぞ二人とも! 退け! マキシ・フレイムランス!」


 ミレイスの合図とともに俺とデメルは巨人から距離を取り、直後ミレイスから特大の炎の槍が放たれ、槍は魔人に刺さった直後爆散した。

 炎と煙が魔人を包む。


「やったか!?」


 しかし大きな爆発の中から現れたのは、それを問題ともしない様子の魔人だった。


「その程度で俺を倒せると思ったか。舐められたものだな、人間よ」


「万事休すか……」


「終わりなら俺は行くぞ。あの人間の住処を滅ぼして、秘宝を探さねばならん」


 今いる最高戦力のミレイスがチャージをした上で、恐らく使ったのは使える中でも一番強い魔法だろう。

 呆れたような表情を見せる魔人を前に、次にできることはなんだ。

 必死に頭を回していると、聞きなれない謎の声が響き渡った。


「巨人族の王よ! あの都市に流れ着いた宝を探しているのか!」


「俺は巨人族ではない! 魔人をあのような野蛮な奴らと一緒にしないでもらおうか」


「すまなかった、魔人族の王よ!」


「俺は王でもない! 我らが王を愚弄するか!」


 謎の声は、いつからか俺たち三人のほかに魔人の側にいた、ローブ姿の人物のものだった。

 最近噂になっていた人物だろうか、いやしかしミレイスはそれとは別にいる。

 どういうことだ。

 突然の展開についていけない中、ローブの人物の話も続く。


「朱の秘宝とはこれのことではないか!?」


 その人が掲げた右手には、透き通り赤く輝く宝石。

 魔人の探している物を見つけてきたのだろうか。

 剣を下ろし、その宝石をまじまじと眺める魔人。


「確かにそれこそ俺が探していた秘宝の一部だ。だが一部だ、他の部分はどこにやった! 壊したか! 売り払ったか! 魔人の秘宝を穢した罪を贖ってもらうぞ!!」


 そう叫ぶや否や、烈火のごとく怒りだした魔人。

 今までは本気になっていなかったのか……。


「仕方ない、フォークリエット・サンダー!」


 それに対してフードの男も聞いたことのない雷の魔法を放ち応戦するが、やはりミレイスのもの同様効いている様子はない。


「シャドウステップ!」


 反撃をする魔人の一撃を、これまた聞いたことのない影が覆う魔法で躱した。

 少なくともあの者は、魔人を諫めるために宝石を持ってきたということは、王都を守るために来ているのは間違いないはず。何か魔人に対処する手はあるのだろうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。