#25 宿で大雨をしのぐ
外はごうごうと大量の雨が地面を打ち付け、風が宿の壁を叩いていて、とても冒険者ギルドに行けるわけもなく、宿のベッドの上で状況を整理していた。
「今のところはだが、ライレインに正体を明かしたのは正解だったな。彼女には戦闘を見せていないし、スキルも詳細は教えていない。近々で召喚されたのならあまり強くない勇者と考えて、襲ってくる可能性も、あるいは城に突き出される可能性もないではなかったが、彼女の優しさに感謝だな……」
もちろん襲われた場合も逃げれなくはないが、ここから別の地に移住する必要はあっただろう。
この世界ではかなり発展している場所だと思うので、出来る限りここで暮らしたいところ。
「まともに頼れるのが一人とはいえ、魔法を研究していてコネクションもかなりありそうだし、協力者としてはライレインは上々だろう。でもってアリアについてだが、様子を見つつ彼女にも接近してもいいかもしれないな」
もう一人の協力者としてアリアには素材売却をしてもらっているが、逆に言えばそれしか頼んでいない。接触は最低限にしているため、金策でしか交流がないのだ。
しかし、どこかこちらに遠慮気味というか、少し恐れているように見える。
ファーストコンタクトがオーガ全殺しだったのを考えると、わからんでもない。
ピンキリではあるが、オーガは強いもので倒すのにA級が必要だったりもするとか。数が多いと危険だとか、会話の中から拾える情報ではこんなものだった。
自分でもこれを瞬殺して回る人に、おつかいを頼まれたら怖い。
しかし逆に言えば怖いと思われているなら、こちらが横暴にしない限り、ある程度は逆らわれることもなく、相手のコントロールが効くはず。
「アリアも近しい協力者として取り込む方針で行くか。とはいえ今考えられるのはこれくらいだな。この世界から出るにあたっては、ライレインからの情報待ちしかないし、そもそも前例がない厳しい話だ。しばらくはこっちに、腰を据えて生活することになるな」
時間停止で安全にモンスターの素材を集めているので、活動資金に今のところ目立った問題はない。
しかし、合間合間に助けを求める冒険者のところへ行ったり、街を散策したりしているが、生活する上でひとつ致命的な弱点を見つけた。
「ゲームがないんだよなあ」
そう、元の日本なら身の回りにあったデジタルゲーム、コンシューマーからスマホまで様々あって娯楽には困っていなかったが、剣と魔法の世界にそんなものはない。
だからこうして何もないと暇するしかないし、そうでなくともゲームをやりたくなってもできない。
この一点は異世界の最悪な点と断言できる。
「仕方ない、筋トレするか」
そうして空いた時間に筋トレこそしているのだが、なかなか筋肉はつかない。
先はまだまだ長そうだ……。




