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#24 土嚢積み

 大雨が降るらしく、土嚢積みに参加したところ、そこにはグラスの姿もあった。

 冒険者でないならば、依頼に時間を縛られることもないということか。

 見つけたのだから声をかけてみる。


「あら、あなたも参加するのね」


「そういうライレインこそ。魔法の研究とかはいいのか?」


「あっちはいつでもできるから。せっかくだし一緒に回らない?」


「いいぞ。ちょうど台車もあるしな」


 土嚢を台車に積んで、集まった各々が街の各所へ台車を進める中、我々も並んで一緒にこれを引いていく。

 前と違うことは、互いに知り合っていること、台車が二人で問題なく引ける重さということだろう。

 もちろん筋力強化は使っているが。

 周囲に聞き耳を立てている者がいないことを確認し、ちらとグラスの方を見る。


「それで実際、公にしてないとはいえ勇者ってどうなのよ。こっちからすると、異世界から来たっていうことすら信じられないわ」


「そうだな。俺もまさか別の世界があったなんて信じられなかったぞ。ただライレインは色々聞いてるんだろ?」


「ええまあ。聞いてるとは言っても、召喚される異世界もかなり種類があるらしくて、流入してくる知識や技術もバラバラ。決して上手くこの世界に組み込めてはいないのよね」


「そんなもんか。まあ俺からしたら世界が少なくとも二つはあった、そうなったら他にいくつあってもおかしくはないな」


 勇者については城が育成や管理を徹底しており、冒険者ギルドに勇者ランクがあるのもその一環だ。

 貴重な素材である、ラズラドールを使い呼び出すため、勇者の損失や消耗を可能な限り避けつつ、魔王を倒しに行きたいということだろう。

 そういう意味では、城の監視を抜けてきたグラスのような存在は、珍しいと言える。


「城が管理してて基本近づけないから、実はこうして勇者と話すのって初めてなの。色々聞かせてよ、元の世界のこととかさ」


「勇者といっても、なんも面白いことなんてないぞ?」


「いいからいいから。周り誰もいないしね、私たちの土嚢はこの辺かな」


「んじゃ降ろしていくか」


 目的の区画に着いたが既にどこの家も、窓やらドアやらは補強が済んでおり、今は買い出しか中で何かしているのだろう。

 二人で土嚢を抱えて、台車から出して積んでいく。


「そうだな……。勇者なんて言っちゃいるが、俺も元の世界では一般人だった。スキルがあるからこそ勇者たり得る、みたいな話だ」


「へー。特別な人が召喚されてくるでもなく、その辺はランダムなのかな」


「恐らくギルドのレベルによる強化システムで、その辺は問題ないんだろう。んで、元の世界では魔法はなかったな」


「じゃあこっちの世界のが快適だったり?」


「いや。科学や技術が発展していて、電気を動力とした機械。こっちでいう魔道具にあたるものが、仕組みこそ違えど発展していて、普段の生活から娯楽から何までを補っていたよ」


 どうやらこの世界よりも、先を行ってそうな世界から来たらしい。

 となると逆に不便しているということか……。


「建物は高いところだと数十階あるものが建っていたり、魔力なんて大層なものはなかったり、そもそもモンスターもいない世界だったな」


「城は別として、ギルドなんて大きくて三階建てが限界よ。技術が磨かれた平和な世界だったのね」


「どうだろう、平和っちゃ平和だが、個人の諍いから国同士の戦争まで争いはあったぞ」


「そこはどこの世界も変わらないのね」


 もちろんこちらの世界も国同士で戦うし、酔っ払いやギルドでの乱闘もある。

 魔法や武器代わりに、その機械を使っているのはなんとなく想像できる。

 強いものだと魔法もすごく強いから、破壊規模についてはあまりわからないが。


「そんな世界から来たわけだが、残念ながら俺はこそこそ隠れていて、勇者と名乗れるのかも怪しい」


「そんなことないわ。こうして手伝ってくれているんだもの。少なくとも私は認めているから、自信もって」


「……こっちの世界に召喚されて、初めてじっくり話せる相手があなたでよかった。ありがとうライレイン」


「正体を隠していたものね。大丈夫、私は味方だから」


 表情こそ窺えないが、少し疲弊したような声音から、苦労していそうな様子が伝わってくる。

 今はまだ勇者の帰還について何も情報がなく、慰めることしかできないが、いずれ彼が喜ぶようなものを用意しておきたいところ。


 そんなこんなで適当に話をしている間に、割り振られた台車の土嚢は全て配置できていた。


「これで全部か。お疲れ様」


「ええ、本当にお疲れ様」


「あとは一旦お互い大雨に備えるだけか」


「そうね。運んできた台車は返しておくわ。あなたもご安全にね」


 お互いに挨拶をして、この場を別れるのだった。

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