#23 ドブさらい
「いつも手伝ってもらっちゃってすいませんね……。ギルドに依頼は出してるものの誰も来なくって……」
「いいや。こっちも暇していたからな」
城下町の役場は常に手一杯で、側溝をはじめとした街の清掃に割かれる人員は多くない。なのでギルドに依頼は出すが、まあもちろん誰もやりたがることはない。
低級冒険者もやはり討伐依頼、あるいは採取や雑用を選んでいるらしく、こんなものを選ぶ物好きはいない。
それでも定期的にやってはいるものの、どうしても手が及ばない範囲は出てくる。
そうして頭を悩ませていたところに、全身ローブで怪しげかつ親切な彼がやってきたのだ。
彼はどんな技術を持っているのか、今まで来てもらったのは数回だが、すでにドブさらいのエキスパートとも言えよう。
「その手腕をぜひ教わりたいですね」
「残念だが企業秘密ってやつだ。すまないな」
「謝らないでください。手を貸してもらえるだけで十分ですって」
手分けして掃除しているため彼の技術は盗めないが、彼は倍以上の区画を掃除しているみたいなので、それだけでも十分なのだ。
そうして別ルートで掃除を行い、規定の時間に再度合流する。
「さて、今日もお疲れ様でした。甘いパンありますけど食べていきますか?」
「ああ、ありがたくもらおう」
せっかく手伝ってくれた彼を労うべく、軽食を用意している。
ライレインの噂で聞いている限り、彼はあえて名乗らないらしいので、彼の名前すらも知らないが、今後も出来る限り協力してもらいたい。
並んでベンチに腰掛けて、パンをかじる。
そこでふと思い出したかのように、ローブの彼が何やら取り出した。
「そうだ、掃除しているときにこれを見つけたんだ。宝石というかなんというか……。気になったから持ってきたんだが」
彼が見せてきたものは、手のひらに収まるサイズの、綺麗に赤く透き通った石だった。
今までに見たことないものだが、売ればそこそこの値はつきそうだ。
側溝は常にゴミしか溜まらないが、こんなものが混じっていたのか。
「これはさすがに自然発生するものではない、もしかすると誰かの落とし物かもしれない。であれば役場で取っておいてもらいたいのだが」
「そういうことでしたか。わかりました、役場で管理しておきましょう」
ローブの彼から石を受け取る。
ほのかに温かみを感じる不思議な石だ。
他の冒険者たちもこの石のように、温かい心で依頼に参加してくれれば助かるのだが。
「では今日のところはこれで解散かな?」
「はい。……あ、近いうちに大雨が降りそうなので、土嚢を各所に配置する必要もありました。できればこれにも、協力していただけると助かるのですが」
「土嚢ね。わかった、その時も顔は出させてもらうよ」
「ありがとうございます。こっちは元の人数も多いはずなので、言うほど面倒でもないはずです。ぜひよろしくお願いしますね」
近々の約束を取り付けてから彼と別れる。
依頼で来ているわけではないあたり、冒険者でもないのだろう。
このまま彼には役場に入ってもらえれば助かるのだが、さすがに話がうますぎるか。




