#21 後々思い返すと意味がわからなかったりする
「冒険者ギルドはいいぞってなんだよ……。ギルドの回し者じゃあるまいに……」
ギルドの酒場で何かの肉塊を食べながら、俺は自らの行動を振り返っていた。
自分が学んだこと、助かったことを他の冒険者にも共有しておこうと、助ける際に助言もするよう心掛けていたが、あれだけは不自然すぎた。
まあ字が読めない以上、俺はギルド以外に情報を集める場所を知らないのもあって、ギルド一択にはなっていたのだが。
ピンチになっていたあたり、彼も大人しく聞き入れてくれるだろう。たぶん。
「でだ、それと引っ掛かるのはミレイスだよなあ」
改めて酒場で地獄耳を発動してみれば、確かに彼女の言っていたように、心当たりのある人助けが、A級冒険者ミレイスのものとして噂されていた。
アリアの推理と言っていたあたり、彼女が正体を隠している俺に配慮して、ミレイスを謎の人物としてでっち上げたのだろう。
良かれと思ってやったことだろうから、アリアを咎めることはできない。
それと目立つことは避けたいので、スケープゴートになってくれることは助かる。
しかし、それはそれで、ミレイス側に不都合があるような口ぶりだった。
ミレイスが何を懸念しているのか、彼女が初心者パーティに混じっているという噂だけでは、その全貌は見えてこない。
気にかかるところだ。
今後も追われるのも勘弁したいところ。
「まあ正体隠して逃げ続ければ、いいか」
時間停止さえあれば追うことは叶わないだろう。
が、これまたスキルの問題が見えてきていた。
「普通に勘のいい人に見られれば、勇者ということがバレかねないのがなあ」
今までは、視界外や問題ないであろう相手の前で使っていたが、知らずにB級やA級冒険者の前で使ってしまえば、最初の一度であれば問題なくとも、いずれ異常性はすぐにわかるだろう。
なぜか追いかけてこなかったが、それに気づいてミレイスから走って逃げたのだ。
二度目はさすがにまずいと。
何か身を隠す手段が必要だ。
煙玉でもなんでもいい、目くらましをしている間に時間停止で逃げれば、ばれることはない。
何か手段を探さなければ。
そんなことを考えつつ、新たなモンスターの情報も仕入れて、肉塊を食い尽くしてギルドを出た。
そして習慣になったかのように、自然と俺の足が向いたのは教会だった。
最初はガラガラだった教会も、左右に配置された席に、さらに人が増えてきていた。
最初のように一人中央で祈るわけにもいかず、空いていた左後方の椅子に座って、両手を組んで祈る。
こうして、元の世界に帰れますようにと神に祈っている時間は、不思議と落ち着ける。
そうだ、そろそろこちらの世界にも慣れてきたし、神頼み人助けだけでなく、能動的に帰る方法も探してみるとしよう。
とっかかりは……前に荷物運びを手伝った、あの魔法使いからでいいか。
何も収穫がなくとも、ツテで他の魔法使いや学者を紹介してくれるかもしれない。
勇者であることを明かすリスクも伴うが、こればかりは避けては通れない。
次のタスクを定めてから祈りを終えて、席から立ち上がる。
教会から出る際、お決まりとでも言わんばかりに、隅の暗がりからシスターがこちらに笑みを浮かべていた。
別にシスターが笑いかけてくること自体は、何ら不思議ではないのだが……。




