#19 サンドワームと戦う冒険者
「クソっ! 硬すぎんだろ!」
対峙するサンドワームに何度も剣を振るうが、それは尽く外皮に阻まれ、ダメージを与えることができない。
農村を襲うスライム駆除依頼の帰り道、偶然遭遇したモンスター。
一体であれば問題なく倒せるだろうと踏んで挑んだが、結果は芳しくなかった。
一見普通のやわらかそうなワームだったが、剣を振るうと一変、剣が通らないほど硬くなり、口をうにょうにょと動かし始めた。
途中で逃走を試みたが、地中を素早く移動するワームから逃げることは叶わず、こうして意味もなく戦っている。
「剣がやられるまえになんとか離脱を……」
ワームの噛みつきを避け、剣で切り続けた結果、剣は徐々にワームの硬さに負けて刃こぼれし始めており、いずれ折れてしまってもおかしくないだろう。
一方のワームは傷ひとつついていない。
ワームに手を構え魔法を唱える。
「スパーク!」
構えた手のひらから迸る雷がワームを襲うが、効いている様子はない。
「やはり土系統のモンスターに雷は効かないか……」
幅広いモンスターに対応できる雷魔法だが、弱点として土のモンスターには効き目が薄い。
そして俺は魔法は雷系しか使えない。
「こんなことなら、別の属性も修めておくべきだった」
雷の補完に、もうひとつ覚えておけばまた違い、こうして苦労もしていなかっただろう。
水の魔法を使えるようになっておくべきだ。
「誰か助けてほしいが、そう都合のいいことも起こるはずが」
改めて右手で剣を構えて、左手にスパークを纏う。
雷は効き目が薄いが、無効というわけでもない。
手札はこれだけだ、これでなんとか……。
「困っているみたいだな」
そんな謎の声が背後から聞こえた直後、サンドワームの口がいくつにも裂け、倒れ伏した。
振り返れば、そこにはローブと仮面をつけた、怪しげな人が立っていた。
警戒して剣を構えるも、相手は敵意はないとでも言うように両手を上げて話し始める。
「別に君を襲いに来たわけじゃない、ひとつ助言をしておこうと思ってね。君は冒険者だろう?」
「……そうだが」
「なら話は早い、冒険者ギルドはいいぞ。依頼を受けるだけじゃない、多くの情報が手に入る。コネクションを作るのもいいだろう」
「何が言いたい」
「D級かC級だろうか。君の剣の腕なら、全身が硬くなる中でのサンドワームの柔らかい部分、弱点が口だと知っていれば、倒すのは容易だったはずだ。つまり準備不足ということ」
「サンドワームは依頼になかった、急に現れたんだよ……」
「それでもだ。この近辺に出現するモンスターの情報も、調べておくべきだったはずだ。有効な魔法が使えないなら、有効な魔石を用意しておいてもいい。命はひとつしかない、それを懸けるのなら、慎重になりすぎるくらいの方がいい」
くるりと後ろを向き、そのまま歩みを進める謎の人物。
「もちろん君がそのままでも問題ないというのなら、それでもいい。だが、後ろを見ろ。死はゆっくりとだが、すぐそこにまで迫っているぞ……」
底冷えのするような声に後ろを振り向くも、そこにはやはり倒れたワームがあるのみ。
そして改めて謎の人物に向き直ったが、そこには誰もいなかった……。
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