#14 水のエレメンタルに襲われた冒険者
どうしてこうなった。
「くそっ! 攻撃が効かないなんてどういうことだよ!」
まだE級の駆け出しだからこそ、モンスターの討伐依頼を選ばず、隣街までの書類を運ぶだけの依頼を選んだというのに、なぜモンスターに襲われているのか。
追いすがる水のモンスターには、いくら短槍を振るおうとも、槍は水でできた体を通過してダメージになっている様子はない。
「しっかり周辺の危険な場所はチェックして、避けれるルートを通ってたはずなのに!」
遭遇してからモンスターを撒くために走ってもみたが、全然距離を離せる気配はなかった。
いっそ隣街までそのまま行って、そこの冒険者に対処してもらうことも考えたが、恐らく隣街までは体力が持たない。
幸いモンスターはこちらの速さに合わせて加速したり減速したりしているため、全力で走ることはなく体力を温存しているが、止まれば追い付かれるはずだ。
後ろを振り返れば、ちょうど水を飛ばしてきていたため、横に飛んで避ける。
「このままだとジリ貧だ……。何かっ、何か策は……!」
そもそも逃げているのが策が無い証拠であり、ほどほどに走りながら周囲を見渡すが、やはり何も思い浮かばない。
人型でない以上、隠れるのは有効ではないだろうし、武器も効かない。
魔法も覚えていないため、倒すこともできない。
「万事休すか……」
もはや手詰まりだ。
これ以上走ってもキリがないと判断し、足を止めてモンスターに槍を構える。
観察しろ、何か、何か突破口を……!
攻撃が通りそうな場所を!
「やあああああああ!!」
「ビシャッ!!」
水の体で少しだけ色が濃い部分を見つけた。
そこを狙ったが、発射される水に当たって接近を阻まれるばかりだ。
一撃の威力は強くないが、絶え間なくどこにその水を蓄えているのかというレベルで、こちらを水で撃ってくる。
目を瞑って顔を守る。
今までは本気ではなかったというのか……。
「ぐ、くそっ……。誰かいないのか……」
一人では手に負えない相手だった、倒すことも逃げることもならなかった。
じゃあどうすればよかったのか。
いや、そもそも冒険者になったこと自体が間違いだったのか……。
全身を打ち付ける水に耐えながら、祈ることしかできない。
「助けて、神様でもなんでもいい。この状況から解放してくれるのなら」
「その願い、聞き届けた」
直後、バチバチと鳴り響く轟音に目を開けると、そこには激しい光とはじける大きな雷の魔法で、身を焼かれるモンスターの姿。
そして魔法を使用した人物がいた。
少し経って雷が止んだ後、モンスターは欠片すら残さず消滅していた。
その人物はフード付きのローブで全身を隠しており、正体はわからないが、こちらに語り掛けてきた。
「見たところ、エレメンタルに手も足も出ないという様子だったが、ああいうのは物理攻撃が効かないんだ。魔石を持ち歩くことをおすすめする」
「あ、ありがとうございます……」
なんとか助けてもらえたらしい。
どっと力が抜けて、その場にへたりこんでしまった。
誰かもわからないが、感謝しかない。
そこでローブの人物が、こちらに何か投げ寄越してきた。
慌てて飛んできたものをキャッチする。
「それは風の魔法が込められた魔石だ、砕けば一度だけ魔法が使える。このまま街へ戻るもいい、依頼をそのままこなすのもいい。それを有効に使って生き延びてみせろ」
「わ、わかりました……」
手の中を見れば、緑の紋様が描かれた石があった。
僅かに魔法の力を感じるものだ。
これを見て頷いたローブの彼は歩き出した。
「では達者でな」
「すみません、まだお礼もできていませんが、いつか魔石と一緒にお返しします!」
「君は先が長い、命を無駄にしないようにな」
「あなたの名前を教えてください!」
「名乗るほどのものではない」
そう言い残して、ローブを風にはためかせ、その者は歩き去ってしまった。
救ってもらった命だ、いつまでもこうしてはいられない、行動をしないと。
俺も立ち上がり、その場を後にした。
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