#11 ゴブリンを討伐するパーティ
ゴブリンは弱い、それはスライムほどではないが、知能が低いからだ。
おびき寄せれば罠にもかかる。
それは逆に、一切の躊躇なく行動することも意味する。
つまり読み切れない特攻があるということだ。
「こいつらっ! ライアン! どれくらい持ちそうか!」
「ぬう……持ってあと5分ってところだ……」
襲い来るゴブリンの群れを、ライアンがタンクとして必死に抑え込んでいる。
こうなったのは、予想できない無謀なゴブリンの突撃により、魔法使いのルゼが気絶させられたからだ。
こういう群れ相手に対してはライアンがルゼを守りながら、その殲滅力でもって押し進め、俺と治癒士イーシャの補佐で成り立っていた。
その陣形の要となるルゼがやられたのだ。
劣勢は避けられないどころか、窮地に追い込まれていた。
「ねえカイ、どうにかして退路を確保しないと!」
「わかってる! だがゴブリンは多いし、入ってきた方向は今いる側から真逆だ。ルゼを運びながら移動すると、ライアンが耐えきれなくなる……。どうすれば!」
切っても切っても湧いてくるゴブリンを切り捨て、嘆きながらもライアンの負担を減らすことしかできない。
最悪ルゼを置き去りにすれば、3人でこの窮地を脱出することも不可能ではないだろうが、そんなことはできない。
同じ村から出てきた幼馴染として、これまでパーティをやってきたのだ。
1人だけ置いていくくらいなら、いっそ4人で死ぬことを……。
「イーシャ! ヒールの出力弱くなってるぞ!」
「無茶言わないでライアン! こっちも魔力が尽きかけてる中やりくりしてるの! それもゴブリン減らしながらよ! 文句言わないで!」
「二人とも仲間割れしている場合じゃないだろう! 今はこの状況を打開する方法を探さないと!」
ゴブリンの波状攻撃で、ライアンの消耗が激しい。
このままだと5分も持たないだろう。
イーシャはライアンを回復しつつ、メイスでゴブリンの頭をかち割っている。
この状況でよくやってる方だ。
三者三葉必死にゴブリンを捌いていたところで、フッとライアンを包む淡い緑の光が消えた。
「あっ、おい! 回復!」
「もうカラよ! 絞っても出ないの! 誰か助けてよ!」
「ああもう神様助けてくれ!」
こんな時ばかり都合がよいのはわかっているが、人はどうしようもなくなったら、神頼みしかできないらしい。
Dランクになったからと、ゴブリンの巣窟にはまだ来るべきじゃなかった……。
徐々に押される3人、後ろには倒れ伏したルゼ。
もうだめだ、もう……。
と思ったその時、ゴブリンの首がざっくりと切れ、悲鳴を上げながら全てのゴブリンが絶命した。
後ろに控えていたのも含めだ。
振るった剣やメイスは空を切った。
そしてゴブリンの代わりに立っていたのは、ローブで全身を隠し、ナイフを握った人物だった。
「間一髪だったかな」
「あんたがゴブリンを?」
「そう。まあ信じられないだろうし、信じなくてもいいけどね」
飄々とあり得ないことをのたまうその人は、ナイフを脚のベルトに収めて、元来た道を指さした。
「この辺り一帯のゴブリンは全滅させた。また湧きだす前に、早いとこ帰った方がいい」
「あ、ああ。そうさせてもらうよ」
この場を処理してくれただけでも感謝しかない。
どれだけ怪しかろうと、この人を信じる以外に選択肢はない。
見知らぬ冒険者相手に、嘘をつく理由もないだろう。
「ルゼは俺が運ぶ。ライアンとイーシャは周囲の警戒を頼む」
「ああ、ルゼは任せた」
「わかったわ。すぐにでもここを出ましょう」
各々気を引き締め、退却の準備をする。
気絶したきり未だ起きないルゼをおぶって、謎のローブに向き直る。
「この恩はいずれ返す。名前を教えてもらいたい」
「名乗るほどの者ではない。お前たちが冒険者である限り、また会うこともあるかもしれないな」
それだけ言い残して、次の瞬間。
元からそこには誰もいなかったかのように、忽然とその人は姿を消していた。
評価やリアクションなどいただけると励みになります




