その27
のんびり不定期連載です。
結局この場では、通常版の魔石220個で手を打ち、金貨20枚と銀貨200枚を受け取ってギルドを後にしました。
程よく稼げたので早速使いに行きましょうか! お野菜と果物を手に入れるのです!
改めてボンボンの町の市場へ繰り出した。当然目立たないようにフード付きのローブを纏って…
「しかし、よくよく見ると野菜の種類が少ないですね。この辺りの土地は農業に向いてないのでしょうか」
そうは言っても、私は比較的草食なので、種類が少ないからと言っても買わない選択肢はありません。お肉も食べる事は食べますが、それほど大好きという訳ではないんですよね。
似たような品揃えの露店を順番に巡り、少しずつ買い集めて迷宮へと向かいます。
「あっ…」
「え?」
昨日騒いできた職員さんがいますね、まぁどうでもいいんですが。
「あの、昨日はすいませんでした」
「いいえ、まぁ騒ぎすぎだとは思いましたが、今後なければ問題ないですよ」
「ありがとうございます。 質問なんですけどいいですか?」
「なんでしょう?」
「もしかして、ここから迷宮内にも転移魔法で行けるのですか?」
「それは難しいですね、行き先の明確なイメージを必要としますから、迷宮内は似たような場所ばかりですからね。それに魔力の消費も多いので多用はしたくないんです」
「そうなんですか、便利な魔法だと思っていましたが、やはり厳しい制約があるんですね」
「そうかもしれませんね、まだまだ改良の余地はあるんですが、時間はかかると思います」
「なるほど… お引止めしてすいませんでした、それでは気を付けてどうぞ」
「はい、それでは」
態度が軟化していました、彼なりに騒ぎすぎたと反省しているのでしょう。それでは… 45階層まで一気に行きますよ!
「なんて言ってみましたが、探知魔法で戦闘をほぼ回避しても、さすがに1日では着きませんでした」
先日通ったので、ある程度の道は覚えていますが、さすがに距離がありますし、なにより働きすぎはいけません。夕方になったらお仕事は終了です!
現在は31階層なので、明日中には到着しますね。 さて、夕食を取って休みましょうか。
いつもの野菜スープを作る過程に、コカトリスのお肉を一口大にカットして入れます。そのまま野菜が柔らかくなるまで煮込んでやれば、お肉のうまみが野菜にも染み渡っていつもと味が変わり、飽きが来ません。 まぁ… 少し脂っこくはなってしまいますが。
「それにしても、最高到達点が37階層の迷宮で、30階層以降で遭遇できるコカトリスの魔石… 思ったよりも値段が安かったですね。あの程度の単価であれば、無理して潜る人はいなくなってしまいそうですが…」
確かにコカトリスの魔石が1個で銀貨10枚ならば、相当数狩らないと賄えないですよね。ましてや最高到達点が37階層という事は、コカトリスを狩れる力があれば、この迷宮ではトップチームという事になります。賄えるほど乱獲できるのであれば、もっと先まで進んでいてもおかしくないですもんね・・
「あ、そうか! お肉の値段を聞いていませんでしたね! もしかしたらお肉の売却益で稼いでいるのかもしれません」
元の世界でもコカトリスのお肉は高級品でした、きっとお高いのでしょう。依頼もありましたしね、しかし!売りません! むふー
元の世界でのコカトリスは、絶対数が少ないために、かなりのレア魔物となっています。こんなにたくさん狩れる機会は今しかありませんよね!
フフフ… 明日も乱獲に励みましょう。私の収納魔法であれば腐ってしまう心配はありませんからね、今日は早めに休んで英気を養いましょう。
─ショコラ王国、王城─
「なんだと?ロゼ王国の第3王子が町を訪れた途端に避けるように立ち去ってしまった…だと?」
玉座に座る、まだまだ若さを感じさせる風貌のショコラ王は、額に手をやっていた。
「はっ、私の所にも、立ち去った後に書簡が届いたという状況だったので、引き留める事が出来ませんでした」
「そうか… まぁそれは辺境伯のせいではないが、異世界の…それもアマンダ様以外の神の使徒となれば、是非とも会ってみたかったのだがな」
「見た目は美しい少女なのですが、なかなかに厳しい方でした」
「ほぅ? なにかあったのか?」
「ちょうど代官のガナシュの娘の見合いの相手として、タルト伯爵家の嫡男であるストローが滞在していたのですが、使徒殿に無礼を働いてしまい、お仕置きと称して攻撃しておりました。ストローは成す術も無く失神させられていました」
「なんと… タルト家には厳しく言ってやらねばいかんな。いっそ男爵まで降爵してやろうか」
「それがよろしいかと、伯爵家の立場を用い、数多くの女性に手を出していると聞き及んでいます。我が国の貴族に対する悪評に繋がるかと」
「まぁ、我が国を救ってくれた英雄殿に対しての無礼だ、厳しく罰さないとアマンダ様からもお叱りを受けてしまいそうだな」
レクタングル辺境伯は、自領で起こったアレコレを国王に報告していたのだが、ついでにタルト伯爵家を追い落とす事が成功して気分が良かった。
なにせタルト伯爵家は、絵にかいたような悪徳貴族で悪評も高く、タルト伯爵領に住む民が、どんどん他領へ逃げ出すほど厳しく税を取り立てていたのだ。
挙句に嫡男がアレだし…
「男爵まで降爵し、領地も取り上げた方が良いかと存じます」
「うむ、早速会議をしないとな」
更にトドメを刺そうとする辺境伯、国王陛下の返答に気を良くしながら謁見を終了したのだった。
「ふん、タルト家など早々に滅んでしまえばいいのだ。ミルフィは孫も同然、そのミルフィを虚仮にしたのだ、その報いは受けてもらわんとな」
レクタングル辺境伯は、鼻息を荒くしながら客間へと向かって行った。今日は王城に泊まって、明日に辺境伯領の領都に帰る予定である。
城塞都市ビターに寄って、ガナシュ家に今の話を伝いたい所だが、さすがに自宅を長い間空けているので、帰宅しないと妻からの氷の視線で殺されてしまう… 本当に死んだりはしないが。
翌日、あっという間に採決が取れ、タルト伯爵家に対して緊急招集の書簡が送られる事となった。当主に夫人、嫡男含め全ての子供達までの召集… 普通に考えれば伯爵家の一大事だと分かるように。




